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冨安健洋投入でアーセナルは何が変わったのか? 貧弱な守備を蘇らせた方法【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

なぜアーセナルの守備は貧弱だったのか


 冨安の守備を賞賛する前に、まずアーセナルの守備がなぜ貧弱だったのかについて触れる必要がある。守備に問題があった最大の原因は、この試合でターンオーバーを採用していたことにあるだろう。ターンオーバーそのものが悪いことではなく、寧ろ残りのシーズンを踏まえると良いことなのだが、代わりに出場していた選手のパフォーマンスが芳しくなかった。

 GKのマット・ターナーはスポルティングCPがアグレッシブなプレッシングを掛けてくるチームであることを知らないのか、味方選手が相手に捕まってもおかしくない場所にスローで配球。そのままボールを奪われて、危うく失点をしてもおかしくないピンチをいくつか招いた。

 そして左CBには今冬に加入したばかりのヤクブ・キヴィオルが起用された。この若きポーランド代表DFのパフォーマンスそのものは批判を浴びるべきものではないが、左SBのオレクサンドル・ジンチェンコとの組み合わせだったことを考えると、どうしても対応は難しかった。

 ジンチェンコは偽サイドバックとも呼ばれる戦術で、中央に絞ってプレーすることが多い。この戦術の場合、左CBがかなり重要となってくる。ボール保持時もパスの配球の面で工夫が求められるが、それ以上に大事なのが被カウンター時の守備対応だ。ビルドアップ時にボールを失った場合、内側に絞ったジンチェンコは従来の左SBがいるべき大外のレーンを完全に空けている。そのため左CBの脇に広大なスペースが生まれ、そこを相手に突かれることが多い。

 その際にジンチェンコとの連係が完成されているスタメンのガブリエウ・マガリャンイスは、カバーリングエリアの広さを生かして、相手の右WGと大外のレーンにまで出て対峙して止めるが、この試合が初先発だったキヴィオルに、状況に応じて内側のスペースを埋めるか、大外に出て相手選手と対峙するかを即座に判断を委ねるのはかなり難しい。

 55分の失点の場面では両者のポジションが被り、大外をドフリーで駆け上がっていた右ウイングバックのリカルド・エスガイオに決定的なクロスを許した。左WGのリース・ネルソンもガブリエウ・マルティネッリと比較するとディフェンスで頑張るタイプではないため、この試合のアーセナルは左サイドの守備の連係に大きな問題を抱えていたのだ。

 また、カウンター守備に強いトーマス・パーティもこの場面でピッチにおらず、相手FWフランシスコ・トリンコンにドリブルで中央突破を許していた。

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