なぜ香川真司はセレッソ大阪復帰を決めたのか
「やはり30歳になると、ヨーロッパでは特にシビアにとらえられる。年齢のことも含めて、いままでに経験したことのない、いろいろな現実を見せられました」
2019/20シーズンからはサラゴサへ移籍。2部ながら念願のスペインでのプレーを実現させるも1部昇格を逃し、2シーズン目には再びチーム構想から外れる。2020年10月にサラゴサとの契約を解除した香川は無所属状態を経て、2021年1月にギリシャの強豪PAOKへ加入した。
しかし、期待が大きかった分だけ、思うような結果を残せない香川に対する逆風が強まる。1年も経たないうちにPAOKとの契約を解除した香川は、翌2022年1月にシントトロイデンへ移籍。加入会見で「僕自身も正直、考えるところがありました」と胸中を打ち明けた。
考えるところとは、イコール、日本への復帰となる。当時はDF酒井宏樹、FW大迫勇也、FW武藤嘉紀、MF乾貴士、そしてDF長友佑都と日本代表の盟友たちが続々とJリーグへ復帰していた。
次は自分が、と考えるのは自然の流れだった。実際に古巣セレッソからは複数回にわたって復帰へ向けたオファーが届いていた。しかし、香川はそのたびに「まだやり残したことがあります」と丁寧に断りを入れ、頑ななまでにヨーロッパでの挑戦を継続させてきた。
一転して2023シーズンからJリーグへ、セレッソへの復帰を決断したのはなぜなのか。2月5日に東京都内で行われた加入会見。ドルトムントへ移籍するまで背負っていた、ミスターセレッソを象徴する「8番」を再び託された香川は、カタールワールドカップの存在をあげている。
「2022年のワールドカップまでは、ヨーロッパでプレーすると自分のなかで決めていました。その後は自分がどのように感じるのかを大事にしよう、と。ちょうど手術を受けたタイミングもあり、リハビリをしながらいろいろなことを考えたなかで、このタイミングがベストだと決断しました」
慢性的な痛みを抱えていた左足首の手術を受けると、シントトロイデン側から発表されたのは昨年11月2日。くしくも前日には、カタールワールドカップに臨む森保ジャパンのメンバー26人が発表されていた。3度目の出場を目指していた香川の名前は、当然ながらリストになかった。
直後に香川は自身のツイッター(@S_Kagawa0317)を更新。カタールワールドカップへ向けて抱いていた一縷の希望に、踏ん切りをつけるようなつぶやきを投稿している。