どん底のクラブに現れた1人の女性
また、クラブレジェンドであるアラン・シアラーとの関係悪化も浮き彫りになった。2009年に一度監督として指揮を執ったシアラーだったが、キーガンの一件から混乱の渦中にあったチームは最悪の状態で、結果的に降格を避ける事はできなかった。
その後は経営陣に対する批判を公の場で繰り返しており、これに対してアシュリーはスタジアム併設のバー「シアラーズ・バー」から名前を削除するなど対抗。彼の銅像が元クラブ会長によって建設されたときにも、スタジアム敷地内への設置は認められず、他のレジェンド選手とは離れた場所にポツンと寂しく佇むことになってしまったのだ。
こうした様々な背景からサポーターの不満は年々大きくなっていき、ボイコット運動やスタジアム前でのプロテストなどが毎週のように開催されるようになる。大きなフラッグを掲げていた応援団も、クラブの売却が実現するまでの活動停止を決定。試合中の大歓声もいつしか、「Where’s the money gone?」(金はどこへ消えた?)、「Get out of our club!」(俺たちのクラブから出て行け!)など、ほとんどが経営陣に対する批判的なものとなった。
アシュリー政権も11年目に突入した2017年10月1日、セント・ジェームズ・パークのスタンドに1人のビジネスウーマンの姿があった。スタジアムの雰囲気に圧倒されたのか、目を輝かせながら笑顔でファンと交流したこの女性の名前は、アマンダ・ステーブリー。リバプールとのドロー決着を見守ったこの日からクラブ買収を実現させるまで、彼女の長い戦いが始まった。
(文:WASSY)
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