「このような組織があるのは本当に素晴らしい。ただ…」
学費も寮費も免除されるJクラブのアカデミーは、いま現在も京都以外に存在しない。一方で京都に限らず、トップチームへの昇格は狭き門となる。このため、成績次第では立命館大学への内部進学も可能とした。実際に2006年の一期生、翌年の二期生は全20人が大学生になった。
SAPのもとで選手たちは午後4時半まで立命館宇治高で授業を受け、約1km離れたサンガタウン城陽の専用練習場へ自転車で移動。約2時間の練習を終えると今度は約3km先にある寮へ再び自転車で戻り、専門家によって栄養などがしっかりと計算された夕食を摂る日々を送る。
選手寮の『RYOUMA』では、SAP対象選手以外のアカデミー選手たちも寝食をともにする。昨年8月に逝去した稲盛氏の遺産とも言うべきアカデミー組織を、曺監督は「京都として選手を作る生命線の組織であるのは間違いないと思います」と感謝しながら、こんな言葉を紡いでいる。
「ここで生まれ育った者の一人として、京都は人材育成や子どもの教育にすごく熱心な町だと思ってきたので、このような組織があるのは本当に素晴らしいと思っています。ただ、選手たちが当たり前だという感覚に陥って、自分自身を伸ばす努力を怠れば本末転倒になってしまう。アカデミーの選手たちだけでなくコーチ陣に対しても、折を見てそういう話をしてきました」