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三笘薫が不完全燃焼に終わった原因? エストゥピニャンへの批判は正しい評価なのか【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

エストゥピニャンが強引にでも前に出るべき理由


【写真:Getty Images】



 前半のブライトンのビルドアップは、エストゥピニャンどうこう以前に三笘に良い形でボールが入りにくい状態だった。ルイス・ダンクとボランチのようにポジショニングするエストゥピニャンが内側で縦関係になっているため、三笘との距離が広い。さらに、ダンクはマンマークを受けず配球しやすい立場なのだが、右利きであり、三笘のいる左サイドにパスを出すとボールが外に逃げる形になるため、長いパスはよりリスキーになる。そのため、三笘は低い位置で、かつゴールに背を向けた状態で受けに行くしかなかった。

 高い位置でボールを受けても、クラインが縦を切り、すぐにマイケル・オリーズがサポートに来るため、三笘1人でどうにかするには難しかった。ただ、オリーズのマークを受けないエストゥピニャンがハーフスペースを突くことでその局面を打開するプレーは何度か見られている。32分のエストゥピニャンの幻のゴールも、そうした展開から生まれたものだ。

 後半に入りブライトンのビルドアップは変則的な形をとらず、4-2-3-1に戻っている。その時に左サイドの主役になったのがエストゥピニャンで、ガンガン前に出て行った。

 確かにエストゥピニャンのオーバーラップは三笘の使うスペースを消していたが、それ自体はチームにとって大きな問題ではなかったように思う。結局、マーチの先制ゴールを生んだクロスもエストゥピニャンからであり、さらに遡れば三笘をおとりにしたことでオリーズのエストゥピニャンへの対応が遅れ、狙い通りマーチにボールを届けることができている。

 エストゥピニャンがボールを持ちすぎてしまったり、三笘に出しても良い場面でパスを出さなかったシーンが全くなかったわけではない。しかし、三笘がかなり警戒されている中でやや強引にでも高い位置を取るべきなのは間違いなく、そうでなければ左サイドの攻撃はさらに停滞し、自ずと右サイドに対する守備を厚くされていた可能性がある。単に「パスを出せ」や「上がりすぎ」といったことでの批判は安易だ。

 また、三笘は良くも悪くもスペースがある状態での勝負に強く、そうでない場合のプレーには伸び代がある。もしエストゥピニャンがサポート役に徹すれば相手のマークはより三笘に集中するはずで、そういった意味でもエストゥピニャンが攻撃的な姿勢を見せておく意味はあると考える。もちろん2人の関係性はまだまだ改善の余地があるものの、決して悪くはなかった。

 我々日本人は確かに三笘の活躍が見たい。しかし、三笘はあくまでブライトンの1ピースにすぎず、C・パレス戦も同選手が不発だったからといってチーム状態が悪いわけではなかった。三笘にだけ集中し、他の事象を無視して他人を批判するのは危険なことだ。

(文:小澤祐作)

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