三笘薫が活躍し続ける理由とは
三笘の勢いはゴールだけで止まらなかった。1-1に追いつかれた後の57分にはCBのルイス・ダンクからの縦パスに反応してペナルティーエリア内に侵入すると、4人の相手DFを引き付けて逆サイドのソリー・マーチへとパス。力み過ぎたマーチのシュートは軸足に当たってしまいゴールとはならなかったが、三笘がチャンスメイクでも魅せた場面だった。
得点こそ決まらなかったが、この場面はチームとしての三笘の活かし方がよく表れているシーンだ。CBのダンクが出したパスは三笘の足下を狙ったものではなく、背後のスペースに走りながら受けることのできるパスだった。
三笘の武器の一つに加速力がある。初速の速さで相手DFを置き去りにする場面がよく見られるが、これは前を向いた状況でこそ発揮される武器だ。それを良く理解している味方選手は三笘が前を向いた状態でパスを出しており、距離間の近い選手だけでなく、遠いCBの選手まで理解が及んでいるのが今のブライトンの洗練度の高さを現している。
この“日本史上最高のドリブラー”は前さえ向くことができれば、1対1の勝負に勝ったようなものだ。相手を見ながら縦にも横にも仕掛けることができ、味方選手とのワンツーでも相手陣内深くまで侵入できる。このファイナルサードでの選択肢の多さは間違いなくブライトンを助けている。
そして三笘の優れているところはドリブルなどの技術面だけではない。“判断力“にも優れており、状況に応じて最善の選択をする。無理してドリブル突破や強引にシュートを放つことよりも、周りの選手を活用する意識も高いため、一度三笘にボールを渡しても、リターンが返ってくることが多い。この味方選手とのwin-winの関係性が、重要な場面で三笘にボールが集まってくる理由だろう。
(文:安洋一郎)