明暗分かれた三笘薫のサイド
47分に決まった先制点の場面では、先述したダイレクトプレーでのコンビネーションとリバプールのお株を奪うようなショートカウンターからゴールが生まれている。
相手のパスミスを見逃さなかったマック・アリスターからララーナ、三笘、そしてゴールを決めたマーチまでツータッチ以内でパスが渡っていた。マック・アリスターがパスをカットした瞬間に三笘はゴール方向に向かって加速。そこへパスが通った。
この場面を筆頭に三笘は、多くの場面で前を向いた状態でボールを受けることができていた。それはチームの“約束事”があるからに他ならない。
先述した通り、ブライトンはボランチやトップの選手など中央の選手を介して相手のプレスを剥がす。その一方でWGは低い位置でビルドアップに関与せず、基本的に高い位置をとって前に仕掛ける役割を担っている。
フリーの状況で前さえ向ければ三笘の独壇場だ。この試合でも対峙したトレント・アレクサンダー=アーノルド相手にドリブルで圧倒。“ファーストタッチの上手さ”で出し抜いた15分のドリブル突破の場面を筆頭に1対1で勝ち続け、データサイト『Sofa Score』によると地上戦は4戦全勝というデータが出ている。一方のアレクサンダー=アーノルドは7戦全敗と、三笘のサイドの攻防が両チームの明暗を分ける一つの結果となった。
三笘が自身のサイドを圧倒できるのは、ロベルト・デ・ゼルビがチームに約束事を落とし込んでいるからだ。この日本代表FWからすると、これ以上にプレーしやすいチームは他にあまりないだろう。
(文:安洋一郎)