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【英国人の視点】上品な東山MFと岡山学芸館の明るい未来。高校サッカー選手権にふさわしいドラマ

シリーズ:英国人の視点 text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

東山・松橋啓太の得意とする形



 松橋は大会中、ロングスローで高い評価を得ていたが、それ以上のものを見せてくれた。浦和レッズの岩尾憲を彷彿とさせるこの18歳は、中盤で冷静かつ上品にプレーし、右サイドの窮地を美しいクライフターンで切り抜け、決して空いているとは思えない時間とスペースを瞬時に手に入れた。

 松橋は元々攻撃的なプレーヤーだったが、得点力がネックとなり中盤へポジションを落としたと、準決勝の後に語っていた。41分のプレーがその一端を表していた。ボコボコしたピッチでプレーの仕方を誤り、高い位置から大きく飛び出し、せっかくのチャンスを無駄にしてしまったのだ。しかし、その3分後には、北村圭司朗の背後へスマートなボールを送り、真田蓮司がエリア手前からゴールを決める。松橋の得意とする形から東山に同点ゴールが生まれた。

 しかし、後半に岡山学芸館が勝ち越しに成功する。東山の左サイドバック仲里勇真が平塚からのロングボールを不用意にヘディングして2点目のチャンスを作った後、逆サイドに展開し、165センチの木村匡吾が頭で合わせて2-1とする。

 74分、東山は同点の絶好機を迎える。真田のクロスに完璧に合わせた阪田澪哉のヘディングシュートにGK平塚は触れなかったが、ボールは惜しくもクロスバーに弾かれる。失点の恐怖を乗り越えた岡山学芸館は残り5分を耐え抜き、母校にタイトルを持ち帰った。

 勝利した岡山学芸館のほぼ全員が、喜びと疲労のあまり、ピッチに倒れ込んでいた。優勝した木村は「いつかプロになりたい」と語っていた。今大会を通して見る限り、彼とその仲間たちの前には明るい未来が待ち受けていることだろう。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【著者プロフィール】
1985年イングランド生まれ。2009年に来日。「ニッポンとサッカー 英国人記者の取材録」の筆者。「Jリーグ Monthly」のレギュラー出演。高校サッカー、Jリーグ、日本代表など幅広く取材している。過去にはスカパーやNHK、J SportsなどのJリーグ番組出演も。

【了】

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