宇都宮学園対室蘭大谷 決着のつかないPK戦の結末
第65回大会(1986年度)準々決勝
宇都宮学園 0-0(PK15対14) 室蘭大谷
時の私は小学校1年生。そもそもPK戦に5人目以降があることを初めて知ったのがこのときだった。宇都宮学園高校は黒崎久志、室蘭大谷高校は財前恵一と、いわゆる“超高校級”の10番を擁し、大会屈指の好カードと称されていた一戦は、0対0のまま80分間が終了する。
だが、もつれ込んだPK戦は一向に決着する気配がない。5人目までは両チームが全員成功。サドンデス方式に入っても、双方のキッカーがことごとくゴールを決めていく。両GKも含めた22人が誰1人失敗せず、まさかの2巡目に突入。先攻の宇都宮学園は15人目の根岸誠一のキックが、とうとう相手GK星野元彦のセーブに阻まれる。そして最後は室蘭大谷の西舘武志がきっちり沈め、熱戦に終止符。2年生だった根岸の泣き崩れる姿が印象深い。
なお、この歴史的な試合の主審はワールドカップで笛を吹いた経験も持つ高田静夫。PK戦が終わったあと、黒崎は高田主審からおもむろに「PK戦の2巡目は、1巡目とキッカーの順番を変えてもよかったんだよ」と教えられ、「何でそれを今言うんだ……」と思ったことをおぼろげながら覚えているという。
両チーム合わせて30人が蹴ったPK戦は、長らく選手権の最長記録として語り継がれていたが、第97回大会で帝京長岡高校対旭川実業高校が17対16というPK戦を演じ、32年ぶりに記録が更新されたことも付け加えておきたい。