アーセナルが逆転勝利することができた要因
アーセナルが逆転できた要因は、前半からジャブを打ち続けていたことにあるだろう。
何とか前半を無失点で切り抜けたウェストハムだったが、ガブリエウ・マルティネッリ、マルティン・ウーデゴール、ブカヨ・サカの3選手には、一対一や連係面でかなり苦戦を強いられていた。前半からいつゴールが決まってもおかしくない状況が続いていた中で53分に同点ゴールが生まれると、その5分後に逆転ゴール。そして69分にエディ・エンケティアがダメ押しのゴールを決めて、勝負はついた。
この3ゴールには“相手陣内でボールを奪ってからのショートカウンター”という共通点がある。1点目はトーマス・パーティのプレスバック、2点目はサカが敵陣深い位置でデクラン・ライスとのルーズボールの奪い合いに勝利、3点目はサカのプレスバックから得点が生まれている。
前半のアーセナルはウェストハムの少ないボールタッチでの縦に速いカウンターに苦戦していたのだが、後半はその起点を封じることで自分たちがより主導権を握った。アーセナルの1点目が決まる直前に、中央突破を狙っていたライスからトーマスがスライディングタックルでボールを奪ったシーンは、後半のアーセナルを象徴する場面だ。プレスバックで攻撃の芽を摘むと同時にそこからショートカウンターを発動することで、自分たちのチャンスへと繋げている。
アルテタ監督は選手を変えずとも、選手の立ち位置やしっかりとした狙いを定めることでチームに流れをもたらした。ゴールの場面以外での貢献度も大きいジェズスの長期離脱は間違いなく痛手だが、指揮官の名采配でエース不在の初陣を見事な逆転勝利で飾っている。
(文:安洋一郎)