サッカー最新ニュース
「サッカー本」と一括りにしても、サッカー選手の人生を綴るもの、技術や戦術を紐解くものなど、そのジャンルは多岐にわたる。プロサッカー選手はどんな本を読み、どのように意識やプレーに落とし込んでいるのか。世界各国のゴール裏の文化に迫る一冊『ULTRAS ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』を読んだ岡田優希(テゲバジャーロ宮崎→ギラヴァンツ北九州)が思いを綴る。(文:岡田優希)
彼らはなぜフットボールに熱中するのか
『ULTRAS 世界最凶のゴール裏ジャーニー』(カンゼン)
著者:ジェームス・モンタギュー
翻訳:田邊雅之
定価:2750円(本体2500円+税)
頁数:256頁
サッカー人口の減少が叫ばれる日本とは対照的に、画面越しに世界を見渡せば、サッカーに対する情熱が冷めることのない景色が広がっている。
満員のスタンド、3世代に渡って応援をしているサポーター、過激化し煙や発煙等が焚かれ、時に試合は中断されてしまう。ゴールが決まれば全力で喜び、隣の人と肩を抱きしめて、表現豊かに感情を表す。試合はピッチのみならず、電車や飛行機の中から始まっているかのようである。
彼らはなぜここまでフットボールに熱中するのだろうか。
その答えが本書に詰まっている。
世界17ヵ国のウルトラスを体当たりで取材し、時に命の危険に晒されながら作られた本書は、画面越しには理解することのできない生の声を聴くことができる。コロナ禍で国外はおろか国内の行き来も制限される状況で、本書を読めばまるで世界各国のスタジアムを巡り、自分もその場でサッカーを観ているように錯覚してしまう。
「本書はウルトラスがいかにして世界で最も人気のある若者のサブカルチャーの一つに成長したのかを解説している。」(p31)
まず「ウルトラス」とは、「クラブと自らの組織に身を捧げること」と定義されている。試合が始まればチャントを歌い、90分間通して自チームを応援する。
ただ実情は全く異なっている。