ボール非保持時がクリエイティビティを担保する
これが顕著に出てしまったのが、コスタリカ代表戦でした。最終予選のサウジアラビア代表戦で、同じようなシチュエーションで負けています。ボールを保持させてもらえる展開、個々人に責任がかかったときに弱い。
Jリーグを見ていても、ボールを失いたくないという気持ちを感じることが非常に多い。コスタリカ代表戦を見ていて、「この選手はやる気あるのか?」という声があったと思いますが、判断に迷ってしまうとそう見えてしまう。選手たちにはチャレンジしていいという担保がなかったし、それが本当の意味で彼らの弱さ、改善すべき点でした。
だからこそ、自分たちが主導権を握るためには、失った後にクローズアップしなければなりません。失うシチュエーションもある程度想定できるコンセプトがないと厳しい。
ここでプレーしたらこうなる、ここで失う可能性はあるけど、ビッグチャンスになる可能性があるという瞬間がみんなで共有されていれば、その瞬間にゲーゲンプレスができる。攻撃のクリエイティブさを保証するようなボール非保持時の共通理解が必要になります。
たとえば、鎌田大地はフランクフルトで活躍していますが、彼だけがスーパーというわけではない。主導権を握ったときのクリエイティビティだったり、失敗しても大丈夫という担保があるから輝ける。日本代表でも、「三笘薫なら1対1にいくから、失ったらどうするか」というリスク管理が大事。逆接的かもしれないが、ボール非保持時がクリエイティビティを発揮させるための保険になります。
(文:河岸貴/構成:加藤健一)
『フットボール批評』ではドイツの最先端理論を知る在独17年を超える河岸貴氏による「現代サッカーの教科書」を連載中。最新号『フットボール批評issue38』では「中盤でのボールを奪うプレー」を解説している。
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