「12年前と同じ」日本代表は力尽きた
クロアチア代表のように、シンプルにボールをDFライン背後に入れてくるサッカーは日本代表にとって嫌だったと思います。ラフなパスを前方へ入れてきたこともあり、オープンな展開になりました。
こういう展開は、個々の判断と責任が問われるようなシチュエーションが増えます。ボールを奪ったら速く前へ行くのか、または落ち着いてボールを保持するのか、前線の選手は裏に抜けるのか、DFはディフェンスラインを上げるのか、プレスはどうするか。ボールを持たされたコスタリカ戦も同様です。
守備は計算できるが、攻撃は水もの、と言われるようにドイツ戦、スペイン戦の「守ってカウンター」という明確なタスクから、より個々のクリエイティブさが求められる展開には弱かったことは否めない。簡単に言えば確固たる攻撃の戦術がなかった。コスタリカ戦では、「日本代表は勝つ気があるのか?」などメンタリティーを疑う声もチラホラ聞かれましたが、それはボール保持時における各選手の「迷い」から見受けられたかもしれません。
判断できないわけではなく、責任を取れないわけではなく、クリエイティブさがないわけではない。それを発揮させてくれる枠組がなかった。一方で、クロアチア代表には非常に経験のあるクロアチア代表の象徴でもあり、バロンドーラーのルカ・モドリッチがいた。モドリッチと代表で長く中盤を構成するマテオ・コバチッチ、マルセロ・ブロゾビッチらの圧倒的経験の前に、日本代表が力尽きたと見るのが妥当であると思います。
日本代表の選手たちも自分たちが主導権をある程度握らないと厳しいというのは感じたと思います。ベスト8のチームを見ても主導権を握れる強豪国が多く残っています。モロッコ代表に関しては、組織力を持って勝って当然という内容で、グループも首位で突破しています。
モロッコ代表の戦い方は、日本代表にとって1つのモデルになり得るでしょう。スペイン代表戦の守備は理想的でした。前から行きたい気持ちを抑えながら、自陣での守備はコンパクトにオーガナイズされていて、ボール保持者を自由にさせない、サイドでの数的優位の作り方などは、決して自陣ゴールを守るだけではなく、ボール奪取からゴールを奪うことも考えています。一方で準決勝のフランス戦で見せたように、負けはしたものの、ボール保持時にもクオリティーがある。アフリカ勢で初のベスト4進出はミラクルではなかった。