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サッカー日本代表は本当に強くなったか? W杯最大のサプライズを実現、選手たちの「日常」が鍵に

text by 編集部 photo by Getty Images

サッカー日本代表は本当に強くなったのか?




「後ろが1人余っていないと守れないという弱気な守備ではなく、『守備的になっていたとしても1対1で勝っていけるんだ』という自信を持って選手たちは戦ってくれているので、監督としても勇気を持って采配できます。

実際に選手たちの戦いを見ても、この3試合で個々のマッチアップで上回っていけている。攻撃でも守備でも数的優位を作って連係・連動していく部分において、選手たちは素晴らしい個の能力の向上を見せてくれていると思います。

組織力で戦うのは間違いなく日本の良さだと思いますけど、やはり個の1対1の局面で勝っていけるのに加えて数的優位を作れる連係・連動があり、さらに組織力が強くなっていく。このグループステージ3試合でもドイツ代表やスペイン代表、もちろんコスタリカ代表も含めて、世界の強豪国と個々でマッチアップして1対1でも勝っていけて、かつ組織力を生かしていくんだということを選手たちは表現してくれていると思います」

 グループステージのドイツ代表戦やスペイン代表戦のように、自陣に押し込まれる時間帯が長くなっても、最終的に個々が1対1の局面で負けなければチーム全体が大きく崩れることはない。今の日本代表選手たちにはその自信があるからこそ、「いい守備から、いい攻撃へ」という森保ジャパンのコンセプトが機能している。

 スペイン代表戦でのボール支配率17.7%は、ワールドカップで勝利したチームが記録した史上最低の数字だった。現代サッカーにおいてボール支配率はそれほど大きな意味を持たなくなってきているとはいえ、20%を切りながらも逆転できたのには理由がある。

 選手個々のクオリティでスペイン代表に引けを取らず、ベンチメンバーにも欧州のトップレベルで経験を積んだ信頼できる戦力が揃っているからだ。森保監督がワールドカップの大舞台でどっしりと構え、選手交代や大胆なシステム変更など「勇気を持って采配できる」のも、同じ理由だろう。

 吉田の「間違いなく進化している」という実感も、結果によって証明された。日本代表は、意思の統一がとれた11人が世界基準のクオリティをもって強豪国に立ち向かっていけるチームになった。21世紀に入ってからワールドカップ優勝経験を持つ2ヶ国に真っ向勝負で勝ったという成功体験は、日本代表選手たち、そして日本サッカー界の取り組みの確かさを裏づける最高の収穫となった。

 やはりドイツ代表やスペイン代表は、無意識レベルで極東の島国からやってきたFIFAランキング24位のチームを甘く見ていたのではなかろうか。口では「危険なチーム」とは言っていても、頭の片隅に過小評価があれば、それは慢心や過信につながる。

 今回のグループステージ突破によって、これからは日本代表への警戒がさらに強まるだろう。「ドイツ代表とスペイン代表を倒したチーム」として見られ、ラウンド16で対戦するクロアチア代表も厳戒態勢で試合に臨むはずだ。

 サムライブルーが目指す「新しい景色」、すなわちベスト8以上という目標を達成するにあたって、前回大会のファイナリストであるクロアチア代表は必ず越えなければならない壁になる。そこで改めて日本サッカーの本当の意味での成長やポテンシャルが測られることになるだろう。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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