「ゴールは存在しない」とはどういうこと?
ただ、浦和のコーチに就任してわずか1年でこれだけの成果が見えた中で、どうしても気になる点があった。それは西川が代表に選ばれなかった点ともつながっているかもしれない。クロス対応でシュートを未然に防いだ事も含めて、浦和の失点はリーグ最少5位タイに押さえられた。何度か大量失点を喫した試合があったにも関わらずだ。
しかし失点の中には、印象的なスーパーゴールも少なくない。果たしてジョアンの理論は、ゴールの四隅に向かってくるシュートや、クロスバーをかすめながらゴールインするようなボールをどう防ぐのか。修練を続けていくことで、いずれはあらゆるシュートを完璧に防げるようになるものなのだろうか。
ジョアンに聞くべきか教えを受けた選手に聞くべきか、それも含めて、疑問を質疑応答でぶつけてみた。するとジョアンがおもむろに答える。
「シュウ、ゴールは存在するものですか?」
「しません」
そこからジョアンがまくしたてる。しまった、クロス時のポジショニングを例に出したのがまずかった。『守るべきゴールは存在しない、空間を守るんだ論』が3分間に渡って展開される。これも貴重なテーマなのだが、すでに西川から何度か聞いているものでもある。今回聞きたかったのはそこではない。