イングランド代表がチャンスを作れなかった理由
後半の最初のシュートは87分のマーカス・ラッシュフォードのシュートと、試合が進むに連れてイングランド代表はアメリカ代表相手に全く好機を作ることができなくなった。
イングランド代表の攻撃が機能不全となったのは、アメリカ代表MFタイラー・アダムスとユヌス・ムサのダブルボランチの影響が大きい。右のサイドハーフで出場したウェストン・マッケニーも含めたこの3選手は、この試合でピッチを駆け回り、イングランド代表の選手相手にも対人戦でかなりの強さを発揮した。
ボール奪取能力の高い彼らが中盤に君臨することで、そこからアメリカ代表はカウンターの起点を作ることができていた。そうした展開になると、前節イラン代表戦で高い位置でボールを受けてイングランド代表の攻撃に厚みをもたらしていたボランチのジュード・ベリンガムが攻撃を自重せざるを得ない展開となった。その結果、サポートが少なく、前線の選手が孤立することが増えていた。
それでも68分に投入されたジャック・グリーリッシュが入ってからは流れが変わった。同選手が前線で周りの選手に動く時間を与えるタメを作ったことで、投入以前と比較すると攻撃の時間や厚みは増した。しかし、それでもスコアを動かすほど攻撃が活性化されたとは言い難く、無得点で試合を終えた。
6月のUEFAネーションズリーグで、アメリカ代表以上に組織が整っているハンガリー代表に0-4の完敗を喫するなど、今節の対戦相手であるアメリカ代表のように組織的なプレスを行うチームをイングランド代表は苦手としている。こうした対戦相手には得意のセットプレーでしかチャンスを作りだせないのが今のイングランド代表の課題であり、ガレス・サウスゲート監督はプレスを掻い潜る手段を今大会終了までに見つけることができなければ、目標である優勝を成し遂げることは難しいかもしれない。
(文:安洋一郎)
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