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堂安律がサッカー日本代表で味わう「国を背負わないと経験できない感情」。歴史的勝利で進化を証明

text by 編集部 photo by Getty Images

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【写真:Getty Images】



堂安律、サッカー日本代表で進化を証明

 サッカー日本代表は24日、歴史的勝利を収めたドイツ代表戦から一夜明け、次なる戦いに向けて再始動した。



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 1-2での逆転勝利のきっかけとなる同点弾を奪ったMF堂安律は、改めて日本代表としてプレーする喜びや幸せを実感したようだった。「国を背負っていることを、この環境ですごく感じている」と述べ、こう続ける。

「UEFAチャンピオンズリーグで活躍しても、日本で僕と同じように喜んでくれる人はいない。日本代表でこうして勝つと、日本国民全員が『おめでとう』と言ってくれますし。『ありがとう』という言葉や『勇気が出た』という言葉もかけてもらえる。それは国を背負わないと経験できない感情だと思います」

 これまで日本代表では悔しさを味わうことの方が圧倒的に多かった。2018年のロシアワールドカップ後に森保一監督のもとでA代表に定着し、チーム発足当初からMF中島翔哉やMF南野拓実らとともに攻撃陣に欠かせない選手としての地位を築いていった。

 しかし、準優勝に終わった2019年1月のAFCアジアカップ後から徐々に存在感が薄れ、FW伊東純也らの台頭とともにベンチを温める機会が増えてしまう。堂安自身、所属クラブでも調子を落として日本代表から外れた時期もあった。

「フローニンゲンからPSVに移籍した1年目(2019/20シーズン)、日本代表でいうとアジアカップの決勝戦に負けてからの2年くらいですか。ビーレフェルトに移籍する前の1年間は、『自分ってどんなサッカーをしたっけ?』と思うくらいのプレーしかできていなくて、その当時が一番辛かった。自分の感覚が戻る感じがしませんでしたね」

 堂安はオランダのフローニンゲンでの活躍が認められ、2019年夏に同国の名門PSVアイントホーフェン移籍を果たす。しかし、満足のいく出場機会を得られず「自信が一気になくなっていた」という。

 そんな中、2020年夏からアルミニア・ビーレフェルトへ1年間の期限付き移籍を決断すると、ブンデスリーガの舞台で躍動感を取り戻すことに成功。再びキャリアを前向きに進められた要因は、堂安自身の「性格」にある。

「壁に当たった時に、唯一の救いやったのが、当時も『俺はワールドカップでゴールを決める』と勝手に思い込んでいたこと。絶不調で何も先が見えていない中でも勝手な想像やイメージは忘れていなかったので、ある意味恵まれた性格だなと思っています。それがトレーニングを続けられた秘訣だと思いますし、壁に当たっても『その瞬間のために』と思いながら前を向いてやれたので、この性格には感謝したいです」

 日本代表でも出番が限られ、周りでは仲間たちが活躍していると「悔しい気持ちしかなかった」。ピッチ上で自らの価値を証明できない時期は「いろいろな選手が輝く姿を見ましたし、チームメイトなのでうれしい反面、『ふざけんな』という気持ちで試合を見ていました」と明かす。

 それでも諦めずに努力を続けたことが、ドイツ代表戦での貴重な同点ゴールにつながった。

「ドイツ代表戦をやったスタジアムは、アジア最終予選の中国代表戦をやったところで、その時の僕は1分も出なくて試合後に1人で走ったことを思い出しました。悪い印象から少し良い印象に変えたいな、というのがあった。そこが自分の良さ。逃げずに戦った結果が、あのゴールになったんじゃないかと思います」

 2021年9月にハリファ国際スタジアムで行われた中国代表戦以降、アジア最終予選における堂安の出番は激減した。今年3月には日本代表メンバーからも外れ、カタールワールドカップ出場決定ん瞬間に立ち会うこともできなかった。その悔しさを反骨心に変えて、ワールドカップの舞台に立っている。

「3月に日本代表から外れて、客観的に代表戦を見て、輝いているみんなを見て率直に『かっこいいな』と思いましたし、『このチームの一員になりたいな』と改めてハングリーな気持ちになれた。

6月に代表に呼ばれたときは調子もよくて、精神的にも落ち着いて自信を持ってできた。その感覚や緊張感を持ちながらプレーしようということを、9月と今回のワールドカップに向けて意識していました。いい落ち着きが出てきているかなと思います」

 現在も途中出場が多くなっているが、堂安に対する周囲からの信頼感は1年前とは比べ物にならないほど変わっている。周りに「俺が決めますよ。途中から出て」と言いまくって、有言実行。「他の人より辛い思いや苦しい経験を乗り越えたという自信はある」と精神面でもより成熟した選手へと進化を遂げつつある。

「ワールドカップという夢の舞台なので、1試合も無駄にしたくない。消化試合みたいに『もうないわ』と諦める人は、おそらく世界中どこにもいないと思います。大会前から選手たちは『対コスタリカの方が(対ドイツ代表より)プレッシャーがかかるし、絶対に勝ち点3を取らなくちゃいけないね』というメンタルでいたので、結果は気にせず忘れて、そのままのメンタルを持ってやらなくちゃいけないなと思っています」

 自らゴールも決めてドイツ代表に勝利しても、浮かれる様子は一切ない。進化した堂安は、勝って兜の緒を締める。「国を背負っている」誇りを胸に、改めて次のコスタリカ代表戦での勝利を誓った。

(取材:元川悦子、文・構成:編集部)

【了】

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