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ドイツ代表の大失態とサッカー日本代表の成長。歴史的勝利で覆した“数的優位”の前提【コラム】

text by 西部謙司

ドイツ代表の大失態とサッカー日本代表の成長



 その2分後、酒井宏樹が足を痛めて南野拓実と交代。交代はアクシデントによるものだが、これで攻撃的な選手がずらりと並ぶ形となった。浅野、堂安、南野の前線にボランチの1人が鎌田、さらにウイングバックは三笘と伊東という総攻撃態勢である。この交代直後、三笘のカットインからポケット深く入った南野へ、南野のシュートはまたもノイアーに阻止されたが堂安が蹴り込んで同点とした。

 アタッカーばかりになったため守備のリスクはあったものの、83分に浅野の決勝ゴールが決まる。自陣深くのFKを板倉滉が大きく蹴ると、落下点には浅野がフリーになっていた。

 ドイツ代表守備陣はオフサイドをアピールしたが、中央の選手が残っていて浅野はオンサイド。慌てて追ってきたニコ・シュロッターベックを体で抑えながらポスト際まで運んだ浅野がニア上を豪快に打ち抜く。

 ドイツ代表にとっては信じられないようなミスだ。FKに対して中途半端にオフサイドトラップをかけてロングボールの落下点に入った浅野を取り逃がしたのは大失態といえる。

 インジュアリータイムを含めて残り時間15分を守り切った日本代表が逆転勝利を収めた。日本代表は強豪国には1対1では勝てないので、いかに数的優位を作るかが重要と、かつてよくいわれていた。

 しかし、このドイツ代表戦ではマッチアップをはっきりさせればドイツ代表を相手にしても互角に戦えている。個で負けるという前提ではなく、個で負けないという勝つために当たり前の条件を揃えることができたわけだ。チームとして優位性を出すところまでには至っていないが、そこまでの成長を実感できたゲームだった。

(文:西部謙司)

【了】

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