理不尽な攻撃を成り立たせた男とは
そんな超強力な攻撃陣をうまく司っていたのが、アントワーヌ・グリーズマンだ。
ゲームメイクとチャンスメイクの両方を担ってきたポール・ポグバが今大会は不在で、誰が同じような役割を果たすのかというのは注目ポイントだったが、それはグリーズマンに任されていた。スタートポジションは4-2-3-1のトップ下だったが、芝生を全部踏んだのではないかと思うほど、流れの中では自由に動き回っていた。オーストラリア代表は、このグリーズマンを捕まえるのに一苦労していた印象だ。
グリーズマンは中間ポジションで何度もパスを受け、シンプルな捌きなどでボールとオーストラリア代表の選手を動かしていた。前向きでボールを持てれば、正確なキックとアイデアを生かしてズバッと効果的なパスを差し込み、攻撃の勢いを加速させる。まさに司令塔だった。
オフ・ザ・ボールの動きも巧みで、45分にはデンベレの開けた右サイドにポジショニングし、内側への斜めのランニングでロングボールを引き出してボックス内に侵入。最後はエムバペの決定機を演出した。繰り返しになるが、変幻自在なグリーズマンを、オーストラリア代表は明らかに見失っていた。
ゴールやアシストは残せなかったものの、グリーズマンはそのセンスを遺憾無く発揮したと言える。キーパスは両チーム最多の6本を記録しており、データサイト『Who Scored』では2得点のジルーや1得点1アシストのエムバペらを抑えMOMに選出されている。
今大会のレ・ブルーのカギを握るのは、この男かもしれない。
(文:小澤祐作)
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