批判をエネルギーに変える長友佑都
果たして、左サイドバックをめぐる状況は長友が望んだ通りに推移していく。昨夏の東京五輪代表に名を連ねた中山雄太がアジア最終予選から台頭。長友が先発し、後半途中から中山に代わるパターンがいつしか定着した。
しかし、公式戦における貴重な交代枠のひとつを、最終ラインで常に使う森保一監督の選手起用が批判の対象となり、必然的に先発フル出場できない長友への逆風も強まっていった。しかし、長友は反論するどころか、自分にとって必要なものだと真正面から受け入れている。
「僕はそういった批判を、自分のなかでプラスのエネルギーに変えて成長してきた。僕にとって批判はむしろ『仙豆』みたいなもので、もっともっとください、という感じでしたね。その上でみなさんが想像もできないような長友佑都を見せられるように頑張るだけだ、と」
アジア最終予選の過程で長友がおもむろに言及した「仙豆」とは、人気漫画『ドラゴンボール』内に登場するアイテムだ。一粒でも口にすれば大怪我が癒え、体力も回復する摩訶不思議な豆と自分自身に向けられる厳しい批判の声が、いつしか長友にはダブって見えるようになった。
さらにコロナ禍における特例で、交代枠が従来の「3」から「5」に増えている状況も、自身を含めて先発で送り出されたフィールドプレーヤーのメンタルを変えていると力を込めた。
「過去と違うのは交代枠が5つあること。僕だけじゃなくて他の選手たちも『いつ潰れてもいい。行けるところまで行こう』と思って戦っている。代表とはそういう場所だと常に思っているので」