泰然自若。崩さなかったスタンス
9月からスタートしたカタールW杯2次予選の際にも「コンディションは問題ないか?」「試合勘は失われていないか?」といった質問をメディアにされることが多かった。けれども、本人は「何試合か出ないだけで試合勘は失われるものじゃない」と断言。「いろんな壁に当たりながら、それを克服していって今がある。今回の出られない経験もまた経験」とつねに前向きだった。
その言葉通り、11月以降は定位置を確保。1部昇格の原動力となる。自ら欧州5大リーグを引き寄せた実績と経験は大きな自信につながり、代表でも柴崎以上の存在感を示し始める。とりわけ、ブンデス1部初参戦だった20/21シーズンにキャプテンの重責を担い、1シーズンを戦い抜き、デュエル王に輝いたのは大きかった。この1年間を経て、遠藤は紛れもなく「日本の大黒柱」に君臨していた。この勢いは本当に凄まじいものがあった。
だからこそ、森保監督も2021年夏の東京五輪のオーバーエージ枠に彼を選んだ。そもそも2019年コパアメリカ時点では、柴崎を抜擢するつもりで、若い世代との融合を進めるべく、南米の地に連れて行ったのだろう。
しかし、1年間で2人の位置づけは逆転。中盤の要という遠藤保仁や長谷部という偉大な面々が担ってきた役割を、遠藤は引き継ぐことになったのである。
迎えた2021年9月からの最終予選。ご存じの通り、日本は初戦・オマーン代表戦を0-1で落とし、最悪のスタートを強いられた。続く中国代表戦には勝ったものの、10月のサウジアラビア代表戦も0-1で敗れてしまい、序盤3戦2敗という崖っぷちに立たされた。
帰国時の機内では吉田麻也と川島永嗣の両年長者が深刻そうに話し合う中、遠藤は泰然自若のスタンスを崩さなかった。「この段階でも日本がW杯に行けないとは全く考えなかった」とのちにキッパリ言い切った通り、絶対的ボランチの中では「本来の力を出せば勝てる」という確信めいたものがあったようだ。