ストライカーの矜持とプロとしての在り方
もっとも、代表から遠ざかっている期間でも、大迫はその時点でできるベストを自らに課してきた。開幕から未勝利が続く神戸で、特にフォワード陣に故障者が続出していた状況下で、自身も右足の怪我を押して強行出場を続けていた4月上旬。大迫はこんな言葉を残している。
「率直に言って、いまのままでは代表に選ばれないと感じている」
所属クラブで目に見える結果を出した選手のみが、ピラミッドの頂点に位置する代表チームに招集される。あえて代表を遠ざけた発言の根底には、大迫が抱き続ける哲学があった。
7月に入ると途中出場ながら大迫がゴールを決め始め、神戸も上昇気流に乗りかけた時期があった。しかし、8月に日本でセントラル開催されたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の東地区ノックアウトステージで再び負傷離脱。9月シリーズでの代表復帰も幻と消えた。
負傷している箇所を問われるたびに、大迫は同じニュアンスの言葉を繰り返してきた。曰く「ずっと痛めているので。なかなか治らないですけど」と。試合で対峙する相手ディフェンダーへ、戦いの前に弱点はさらしたくない。ストライカーが抱く矜恃がひしひしと伝わってきた。
秋の陣が近づいてきて、ようやく痛みの連鎖から解き放たれたのか。後半開始とともにピッチに立った9月18日のガンバ大阪戦。83分、アディショナルタイムの93分と連続ゴールを決め、逆転勝利に導いた大迫の復活劇は、中断明けの10月に入って一気に加速した。
最終節までの5試合ですべて先発を果たし、そのうち4度でフル出場。12日の湘南ベルマーレ戦でも決勝ゴールを決めるなど、破竹の5連勝へ神戸をけん引していた間に、最下位を含めてJ2への自動降格に長く低迷してきたチームもJ1残留を決めた。
何度も逆境に直面しながら、それでも絶対に前向きな姿勢を失わなかった大迫は、右肩上がりに転じさせた軌跡と、試合中に見せ続ける頼れる背中で神戸を引っ張ってきた。
「コンディションに問題があるなかで自分自身と向き合い、チームに貢献しようと改善してきたメンタリティーは、同年代の選手として本当にリスペクトできた。実際にしっかりとシーズン終盤に照準を合わせて結果を残している。自分のなかでプロセスというものを逆算しながら、あのコンディションまで持ってきた。プロとしてのあり方というものを近くで見てきた者として、本当にリスペクトしかない。サコ(大迫)がいなかったらJ1に残留できなかったと思っている」