なぜ大迫勇也はバックアップメンバー入りを拒否したのか
「経験者の力を借りたいという選択肢も、まだまだ考えるところはある。経験者の存在は非常に大切だが、経験のない選手たちの『ワールドカップで成功したい』という野心を持ち、戦ってくれるエネルギーに期待した。伸びてきている経験の浅い選手たちの芽も大切にして戦いたい」
メンバー発表会見の席で「まだまだ考えるところはある」と明かした、指揮官の未練とも優しさとも受け取れる思いが、バックアップメンバー入りの打診につながったのか。大迫によれば、JFAから連絡が入ったのはメンバー発表から一夜明けた2日だったという。
「メンバー発表の次の日ぐらいに来たので。それはもういい、と。人の不幸を喜びたくないので。そういう形では(ワールドカップへ)行きたくないので。なので、頑張ってほしいです」
カタールワールドカップ代表を選出する上で、大迫は最大といっていいテーマだった。森保監督がコーチを務めた前回ロシア大会から、大迫は不動の1トップを担ってきた。一時は「戦術・大迫」と揶揄された時期もある。長期的な視野に立てば、代表に加えるという見方が大勢を占めた。
しかし、短期的な視野、特にワールドカップイヤーに入ってからは見方が異なる。怪我やコンディション不良が続いた大迫は、3月、6月、9月の代表活動ですべて招集外となってきた。しかも9月のアメリカ代表戦では、前田大然を1トップに置いた戦い方が奏功した。
森保監督は出演したテレビ番組で、前田がハイプレスを繰り返したアメリカ戦の前半を「ワールドカップでの戦い方を共有できた」と高く評価していた。大迫を軸としたポストプレーから、前田のプレスを前面に押し出した堅守速攻へ。腹をくくったとも受け取れる発言だった。