山根視来が感じた過去2年との差
「1敗に対してどこまで思いを持てたかなと。『負けに慣れちゃってないか』ってところは1年の中でも感じられる時期がありました。去年までは勝つだけじゃなくて、勝ったうえで内容をどう突き詰めていくのかを考えていた。そこは(過去2年と)差があったかなと思います」
谷口は「勝利の内容を突き詰めるだけの余裕がなかった」と苦しい胸の内を明かした。
「あれだけ代表に絡んでいる選手がいなくなると、自ずと厳しいところは出てくるのは覚悟していた。今年は目の前の試合をどう勝つかだけでいっぱいいっぱいになってしまった。もっと競争してレベルの高いものを引き出し合うことがチーム力アップにつながる。みんなでもうちょっと頑張らないといけないと思います」と底上げの必要性を強調したのだ。
加えて、キャプテンは「スタメンの平均年齢が高い」とも発言した。確かに今季の川崎を引っ張ったのは、37歳のチョン・ソンリョン、36歳の家長昭博、35歳の小林悠、31歳の谷口らといった面々だった。
20代前半の優れたタレントが海外移籍を選ぶ時代になり、中堅世代が空白になってしまうのはJリーグ全体の問題だが、川崎の若手台頭が乏しかったのは事実だ。しかも、肝心なところでレアンドロ・ダミアンや大島僚太といったキーマンたちがケガをしてしまった。守備の要・ジェジエウの長期離脱も含め、やはり戦力的に苦しかったのは間違いない。そこは来季に向けて早急な改善が必要だろう。
ただ、これだけ台所事情が厳しい中でも、最後の最後まで横浜を追い詰め、意地を見せた部分は前向きに評価していいはずだ。そこが過去2シーズン王者に君臨し続けてきたチームの底力なのだろう。そのメンタリティとボールを保持して敵を凌駕するサッカースタイルは不変だ。確固たるベースを生かしつつ、いかにしてさらなる強い集団を作るのか。今季の悔しさを先に続けつなげていくのか…。川崎は復権に向けて力強く前進するしかない。
(取材・文:元川悦子)