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宮市亮が掲げたシャーレの意味。横浜F・マリノス優勝で果たされた主将・喜田拓也の誓い

text by 編集部 photo by Getty Images

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【写真:Getty Images】



宮市亮、横浜F・マリノス優勝でシャーレ掲げる

 明治安田生命J1リーグ第34節が5日に行われ、ヴィッセル神戸に3-1で勝利した横浜F・マリノスが3年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた。



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 今年7月27日、日本サッカー界に大きな衝撃が走った。サッカー日本代表の一員としてEAFF E-1サッカー選手権の韓国代表戦に出場していたFW宮市亮が負傷。診断は右ひざ前十字靭帯断裂だった。

 約10年ぶりに返り咲いたひのき舞台で、まさかの大怪我。しかも宮市にとって右ひざの前十字靭帯断裂は2度目で、左右通算でも3度目。当然、所属するマリノスの選手たちもショックを受けた。

 一方で、宮市の存在がチームの団結を強くした側面もある。負傷直後のリーグ戦では、エールを送るために背番号「17」のメッセージ入りユニフォームを作成し、全員で着用。試合を終えたMF喜田拓也は「宮市選手の働きが報われるには、優勝するしかない」と述べ、そのうえで「必ず最後にシャーレを渡すと、彼に誓いたい」と決意を口にしていた。

 小池龍太も「自分たちの(Jリーグ)パッチを金にして(宮市)亮くんの復帰を待つというのは、僕自身のミッションでもあった」と語る。

 彼らの誓いやミッションは無事に果たされた。ベンチ外だった宮市はスタンドで試合を見守り、優勝セレモニーではキャプテンの喜田に続いて2番目にシャーレを空高く掲げる大役を任された。

 試合後に取材に応じた宮市は「個人的には7月に怪我をしてからピッチの上では貢献できていないところはありましたけど、自分の思いをみんなが背負ってくれて、ピッチに出ている選手が表現してくれました」と語った。

 先月29日に行われたホーム最終戦の浦和レッズ戦後、ゴール裏に姿を見せた宮市はマイクを手に「この街にシャーレを この街に頂点を」とチャントを熱唱。ファン・サポーターからは「トリコロールの宮市亮 再びピッチで輝け 待ってるぞ」と書かれた横断幕を、無数のメッセージとともに手わたされた。

 ノエビアスタジアム神戸のピッチで、トリコロールの背番号17はチームメイトをはじめとしたマリノスファミリーからの思いが「重さ」となったシャーレを掲げた。「僕のためというのも多少はあると思いますけど、みんなが1人ひとり、チームのためにやってくれたことがうれしかったし、優勝できたことがうれしい」と、宮市は感謝とともに感慨にふける。

「(試合に)出ていない選手が手を抜かない姿勢はマリノスに浸透していると思います。ベンチ外の選手が手を抜かずにやる姿は、(試合に)出ている選手にも影響を与えるし、そういうものを背負って出ている選手がピッチ上で表現してくれる。それがマリノスの良さ。個を置いておいて、まずはチームのためにやり、それが個に戻ってくるという考え方がマリノスには浸透していると思います」

 この宮市の言葉通り、選手たちの中では「宮市にシャーレを掲げさせる」と「宮市のために優勝する」が同義ではなかった。あくまでチームのために戦ったうえで、最後に優勝することで宮市の貢献が初めて報われる。「個」が目的にならなかったことが、優勝を果たせた要因の1つかもしれない。

 全てのセレモニーを終えて取材に応じた喜田は「必ず最後にシャーレを渡すと、彼に誓いたい」という言葉の背景を次のように語った。

「宮市選手のキャリアや背景を考えても、非常に大きな怪我でしたし、僕らに与える影響も非常に大きかったです。それは間違いないんですけど、ああいう発信をすることで、宮市選手の影響力や人間性の素晴らしさがあるがゆえに、周りから彼自身への重圧が非常に大きくなってしまった。

彼だけを美談にするつもりはなくて、怪我で離脱する選手や試合に出られない選手も宮市選手と同じように大切なので、そこは間違えないでほしいという思いがチームメイトとしてずっとありました」

 ただ、「宮市選手は報われるべき取り組みをしていましたし、彼のチームに対する思いを最後に絶対ああいう(シャーレを掲げる)形で表現したかった」と喜田は続ける。最後の最後に、最高の形で約束を果たすことができた。宮市に手渡されたシャーレには、これまでの献身に対する感謝の意味も込められていたのだろう。

「最後にこうやって(宮市にシャーレを)渡すことができて、『ありがとう』という言葉も伝えさせてもらいました。彼も逆に『ありがとう。みんなのおかげだ』と言ってくれたので、彼自身が報われた思いでいてくれれば嬉しいなと思います」

 宮市ととも勝ち取ったリーグ優勝は、永遠にマリノスの歴史に刻まれる。ピッチに立てずともに、常にポジティブなエナジーをチームにもたらした背番号17の存在価値と貢献度は極めて高かった。

 来季こそはマリノスをJリーグ連覇に導くスピードスターの完全復活した姿が見られることを楽しみにしたい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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