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Jリーグ 2年前

盟友の死、最悪のミス…。それでもなぜサンフレッチェ広島は立ち直ったのか?【コラム】

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「こんな逆転劇はなかなかない」



「似たような感じだったのかな。PKを与えてから、河ちゃんが止めるまでの感情は」

天皇杯決勝の延長後半途中から投入された山本は、ペナルティーエリア内でハンドを犯し、PKを与えてしまった瞬間にぼう然とした表情を浮かべていた。しかし、満田が蹴ったPKを河ちゃんこと守護神・河田晃兵がビッグセーブ。絶体絶命のピンチを脱し、PK戦に入った甲府は4人全員が成功して迎えた最後の5人目を山本に託し、大ベテランもしっかりと期待に応えた。

例えるならばジェットコースターのようにアップダウンする心境を、いまも山本を「オミさん」と呼んで慕う自分が6日後に味わわされる。さらに佐々木、そして広島には特別な思いも加わっていた。工藤さんにも報告したタイトルの価値を、佐々木はあらためて噛みしめた。

「(キャプテンとして)特に声がけはしていません。みんなもなかなか処理できなかったと思うけど、それでも背負ってプレーしていくことが僕たちには重要でした。現実を受け止めて、それぞれが多くの思いを抱きながらタイトルを目指していこう、と。みんなもしっかりとプレーしてくれたけど、今日は本当に彼(工藤さん)の力をもらえたのかなと。こんな逆転劇はなかなかないと思うので」

死闘の前後に佐々木は図らずも異なる種類の涙を流した。特に歓喜のそれは、タイトルの重みを介して広島をどのように変えていくのか。答えはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権がかかる今シーズンの残り2試合、その延長線上にある来シーズンの戦いで明らかになる。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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