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横浜F・マリノスが2019シーズンぶりの優勝に近づいている。2019年の横浜F・マリノスはどのようなコンセプトの下でJリーグを制したのか、“異端のアナリスト”が戦術コンセプトを暴く。10月18日発売の書籍『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』から一部抜粋して、マリノスのスタイルを分析する。(文:庄司悟)
横浜F・マリノスの戦術コンセプト「パス1本で複数のアクション」
ボールポゼッションに定評のあるフロンターレでさえ、年間アベレージの「パス総数」は638.1本だったにもかかわらず、F・マリノス戦では第3節435本、第33節474本にとどまっている。同じく年間アベレージが600本を超える名古屋グランパスにしても、第7節403本、第24節514本止まりだ。F・マリノスは1年間を通してフィジカル系のスプリントとテクニカル系のパスを両立させながら、なおかつ相手チームの持ち味まで殺してみせた。「F・マリノス土俵」というべき自分の土俵で戦い続けた証左であろう。
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Jリーグの歴史を変えたといっても大袈裟ではないこの突き抜けたレコードからも、F・マリノスはCFGを招いて、スプリントとパスの両立に着手し、じっくりと時間をかけ、大輪を咲かせてきたことがわかる。これまで日本では、速度(スプリント)を上げれば精度(パス)が下がり、速度(スプリント)が下がれば精度(パス)が上がる、という既成概念のようなものに囚われてきたフシがある。しかし、2019年シーズンのF・マリノスはそんな概念を木っ端微塵に破壊してみせた。そういった意味でも、F・マリノス(それともCFG?)がJリーグに遺した功績は計り知れないものがある。
ただ、言うに易く行うは難しで、スプリントとパスを同時に担保することはそう簡単なことではない。例えば、右SB松原健のパス1本に対して右WG仲川輝人の1アクションだけでは、あそこまでスプリント数はまず上がらない。いくらCFGの選手獲得ルートが優秀で、多くの優良ブラジル人を揃えたとしても、難易度が高いミッションには違いない。
逆に言うと、あれだけのスプリント数に到達できたのは、誰かが出したパス1本に対して仲川のほかに、マルコス・ジュニオール、エジガル・ジュニオ、遠藤渓太など複数の選手のアクションがあったからこそ。となれば、F・マリノスの戦術コンセプトをひとまず「パス1本で複数のアクション」と考えると、同戦術コンセプトを可能にするような秘法をCFGからどのように授けられたのか、が肝となってこよう。CFGの本家本元はマンチェスター・シティ……なるほど、やはりというか、「あの男」の顔が日産スタジアムのピッチ上に見え隠れしてくる。
<書籍概要>
『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』
定価:1,980円(本体1,800円+税)
著者:庄司悟
これを読まずして現代サッカーを語ってはいけない
“異端のアナリスト”庄司悟はこれまでピッチ上で起こる様々な「主旋律」を、誰もが一目でわかる「一枚の絵」で表してきた。「2軸」「非対称」「皿と団子」「同期・連動」「連動→連鎖→連結→連続」「志・智・儀」といった“異端用語”を駆使しながら、ペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、ユリアン・ナーゲルスマン、ハンス=ディーター・フリックたちが標榜する世界最先端の現代サッカーを「一枚の絵」で明らかにする。
【了】