サンフレッチェ広島敗戦に流した涙
実際、その好機が延長後半10分に訪れる。浦上仁騎と代わったばかりの甲府の42歳の大ベテラン・山本英臣がまさかのハンドを犯し、広島にPKが与えられたのだ。
キッカーは満田。「特に決まっていたというのはなかったけど、自分が獲得したんで、自分で蹴ろうとした」と本人は静かに言う。
ところが、背番号39が放った右足シュートは相手守護神・河田晃兵が右手1本でセーブ。決勝点は生まれなかった。「シュートの力が伝わらなかったんで、止められてしまった」と本人も悔やむしかなかった。
結局、試合は120分でも決着がつかず、PK戦へ突入。両者とも3人までノーミスで行ったが、広島の4番手・川村のシュートがまたも河田に防がれてしまった。5番手で登場した満田は延長後半のミスを取り返すシュートを決めきったものの、甲府は5番手・山本まで全員が成功。最終的にJ2勢のジャイキリが現実となった。広島は6度目の天皇杯決勝にも敗れ、またも頂点に立つことができなかったのだ。
試合後にはPKを外した満田と川村が号泣するシーンがクローズアップされた。
「PKを失敗したことで悔やんだり、責任を感じたりすることはない。負けたのは全員のせいだ」とスキッベ監督は若い2人を激励したという。ベテラン・塩谷司も「サッカー人生は長い。彼らはプロとして始まったばかりだし、『こういうこともあるよ』と言いました。彼らがいたからここまでこれたのは間違いないんで」と彼らを庇った。