大舞台の怖さを痛感した若きエース
「相手の圧を受けてしまって、普段だったらボールをつなぐところで蹴ってしまったり、ミスをしないところでミスをしてしまうところが前半は多かった。相手がホントにいいサッカーをしていたし、いいハメ方をしていたんで、飲まれてしまったところはありました。
スタジアムに多くの観客が入って1つのプレーに対するリアクションが普段の試合とは違っていたので、緊張感があったし、そこは少し難しかったです」と今季チーム最多タイの8ゴールを挙げる満田は顔を曇らせた。彼は未知なる大舞台の怖さを痛感させられたようだ。
自慢の攻撃陣がシュート1本に封じ込められる中、守備陣にも焦りが出て、広島はまさかの先制点を献上してしまう。そのシーンが前半26分の甲府の左CKだ。ショートコーナーを使った彼らは、キャプテン・荒木翔がえぐって上げたクロスをアフロのFW三平和司が左足で巧みにゴール。1-0で前半を折り返すことに成功したのだ。
J1クラブとして、このまま敗れることは許されない。後半の広島は頭からエゼキエウ、ナッシム・ベン・カリファを投入して巻き返しに打って出た。満田も「動きを止めることなく連動してプレーすることでチャンスを作れる」と前向きに考えてアクションを起こすようになり、前半よりは躍動感が出てくる。何とか1点を奪うべく、スキッベ監督はさらに野上結貴や松本泰志、ピエロス・ソティリウら持てる駒を次々と投入。残り6分というところで、とうとう同点に追いつく。
きっかけを作ったのは、ドリブルに長けたエゼキエウだった。彼が左サイドに持ち込んだ瞬間、疲労困憊の甲府守備陣は少し対応が遅れ、中に入ってきた川村へのラストパスを防げなかった。そして次の瞬間、川村の左足がさく裂。豪快にネットを揺らしたのだ。これで試合は1-1の振り出しに戻り、延長線へと突入。ベンチパワーで秀でる広島に分があると見られた。