炙り出された「ネガティブな要素」
このように2列目からの攻撃が有効である一方で、最前線にセンターFWがいない点は「ネガティブな点」とすることができるかもしれない。ボックス内に14年の時のミロスラフ・クローゼやポーランド代表FWのロベルト・レバンドフスキ、さらには対戦相手のハリー・ケインのようなセンターFWがいないので、このイングランド戦でのサイドからのクロスは効果的ではなかった。
もちろん2列目、さらにはボランチのギュンドアンも加えた地上戦が有効であることはこのイングランド戦で確認されたが、そこが行き詰った時にどのように打開するのか。たとえ引いたタフな相手に80分間ゴールを奪えなくても、決して“クロス戦術”に陥らない強靭なメンタリティは必要になるだろう。
そういった意味では、この試合ではリロイ・ザネやニャブリのサイドアタックが目立たなかったが、安易なクロスの放り込みではなく、スピードを活かしたサイドからの崩しも再びブラッシュアップする必要がありそうだ。
また、2点リードした後の敵の変化、特にサカのようなポジショニングとドリブルに長けたアタッカーに対処できなかったところも「ネガティブな点」と言えるだろう。しかし、この点は対戦相手のスカウティングと、前述のプレッシングおよびゲーゲンプレッシングの徹底で改善できると思われる。このような「ネガティブな点」をあぶり出せたことは、むしろ「ポジティブな点」と言えるのかもしれない。
こうしてカタールワールドカップ本大会に向けて、イングランド代表との極上のテストマッチを終えたドイツ代表。日本、コスタリカ、スペインと言った曲者、難敵揃いのグループリーグに向けて、ハンジ・フリック監督としても、多くの収穫があったに違いない。
ひとつ付け加えるとすれば、繋ぐサッカーを好む傾向がある日本相手には、むしろ5バック+トリプルボランチで後ろを固め、ヴェルナー、ニャブリ、ザネ、ムシアラたちの技術とスピードを活かしたカウンター型が有効かもしれない。
(文:本田千尋)
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