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アメリカ合衆国代表のプレースタイルとは? 迫力とリスクの両方を持つ戦術的な特徴

シリーズ:代表プレースタイル図鑑 text by 西部謙司 photo by Getty Images

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サッカーにはその国独自の特徴があり、その頂点に代表チームがある。2022年カタール・ワールドカップに出場する32カ国+αの「プレースタイル」に焦点を当てた『フットボール代表プレースタイル図鑑』(9月20日発売)はその変遷を辿っている。今回は本書のアメリカ合衆国代表の項を一部抜粋して公開する。(文:西部謙司)


ワールドカップにおけるアメリカ合衆国代表


【写真:Getty Images】

 アメリカのメジャースポーツといえば、アメリカンフットボール、ベースボール、バスケットボール、アイスホッケーが4大プロスポーツだ。サッカーもそれに次ぐ人気はあるものの、ヨーロッパや南米の強豪国のような国民的スポーツとはいえない。1920年代は野球に次ぐ人気スポーツだった時期もあり、70年代の北米リーグのブーム、デヴィッド・ベッカムやズラタン・イブラヒモヴィッチがプレーした近年のMLSなど、断続的な盛り上がりはある。

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 1930年の第1回ワールドカップに出場していて、ベルギーとパラグアイを3対0で破って準決勝進出を果たした。50年はグループリーグ敗退ながら、イングランドを1対0で破る大番狂わせを起こしている。しかし、それから90年イタリア大会に出場するまでワールドカップ予選敗退が続いた。

 40年間の空白を経ての1990年大会はグループステージ敗退。しかし、開催国となった94年はベスト16進出を果たし、2002年にはベスト8まで勝ち上がった。10、14年は連続でベスト16進出。90年から7大会連続出場、ベスト16以上4回は強豪とはいえないまでもワールドカップの中堅国といった地位にある。

イングランド代表に近い? 戦術的な特徴は…

 プレースタイルはイングランドや北欧に近く、ハードワークと組織力が特徴だ。メキシコなど南米的なプレースタイルの中米に比べると、アメリカとカナダの北米勢はヨーロッパ的といえる。

 2018年ロシア・ワールドカップは予選敗退で出場を逃したが、22年カタール大会は予選を突破。チェルシーのクリスティアン・プリシッチ、ユヴェントスのウェストン・マッキニーといった若手の台頭もあり、21年のゴールドカップにも優勝していて期待は高まっている。

 メンバー全員がヨーロッパのクラブに所属している。移住先でプロになるケースもあるが、MLS経由でヨーロッパへというルートが確立されているのだ。イングランド、ドイツ、スペインなど所属するリーグは多彩。攻撃の切り札となるプリシッチは英国在住経験が7歳のときに1年あり、そのあとにボルシア・ドルトムントのU-17と契約して再びヨーロッパへ渡った。ドルトムントでプロデビューして一気にブレイク、プレミアリーグのチェルシーに移籍した。2020/21シーズンのUEFAチャンピオンズリーグで優勝も経験した。プリシッチはクロアチア国籍も持っている。アメリカらしく様々なルーツを持つ選手たちがいて、チームに多様性をもたらしている。

 アメリカのグループBにはイングランド、ウェールズ、イランとパワフルなチームが集まった。歴史的に兄弟のような関係にあるイングランド、ウェールズとはプレースタイルも似ている。一方、現在は政治的に対立しているイランもプレースタイルとしては近いかもしれない。いずれもハードワークとフィジカルコンタクトが強く、アメリカとして戦いにくさはないだろう。個々のクオリティでイングランドは別格だが、2位通過のチャンスはありそうだ。

 2026年大会をメキシコ、カナダとともに開催国となるアメリカは、それを見据えて世代交代を進めてきた。キャプテンは23歳のプリシッチである。戦術的には敵陣でのハイプレスとボール奪取後のショートカウンターが軸だ。連動したプレッシングは迫力があるが、外されたときのリスクも当然ある。しかし、それでもブレずに邁進する。それが方針ではあるが、4年後の布石でもあるのだろう。

<書籍概要>『フットボール代表プレースタイル図鑑』

定価:2,090円(本体1,900円+税)
ワールドカップ出場国+αの35カ国が実装する[流儀][個性][こだわり]の血統書
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【了】

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