大胆不敵なレアル・マドリードの戦法
レアルの選手たちは自陣に守備ブロックを形成。バルベルデが最後尾まで降りる[5-4-1]と[4-5-1]を使い分け、引いて固めるサッカーに徹した。ボールを持たずに試合をコントロールしようとする様は、ディエゴ・シメオネの哲学を、本人の目の前でそっくりそのまま拝借したかのようだった。
もちろんアンチェロッティが試合後に「そうすることに慣れている」と話したように、もともとレアルは、スコアや時間帯に応じたカウンター型のサッカーも得意としている。しかし、マドリード・ダービーという舞台で、シメオネ本人の目の前で敵将のお株を奪うようなサッカーを披露するという大胆不敵なことは、エル・ブランコだからこそできること、と言って過言ではないだろう。
アトレティコという曲者を相手に、レアルの選手たちには自信があるようだった。53分、自陣左サイドの最後尾にまで戻って守備をしたクロースは、ロドリゴ・デ・パウルへの激しいチャージでファウルを取られてしまっても、苛立つことはなかった。元ドイツ代表MFの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。精神的な余裕がなければ、この状況で笑えるはずがない。
その精神的な余裕、つまり自信は、一体どこから来るのか。もちろん試合を2-0でリードしていた、ということもあるだろう。反対に0-2で負けている状況だったら、決してクロースの顔に笑みが浮かぶことはなかったはずだ。しかし、それ以上にレアルの選手たちの精神的な余裕の源になっているのは、一言で言ってしまえば、「自分たちはどんなサッカーでもできる」、という自信なのではないか。
つまり、ベンゼマがいなくともワンツーで敵を崩すこともできるし、チュアメニが順調に適応してきた中盤ではポゼッションを高めることもできる。さらには、シメオネのお株を奪うように引いて守備ブロックを築くこともできる――。
まさに、“変幻自在”。何でもできる。それがレアル・マドリードだ。
アトレティコを2-0で下した後で、イタリア人指揮官は、次のような言葉を残した。
「このチームにこれ以上要求することはできない」
(文:本田千尋)