久保建英にとって難しすぎた役割
激闘だったユナイテッド戦からすぐの試合だったため、疲労の影響は少なからずあっただろう。ただ、それが苦戦した大きな原因ではない。ヘタフェ戦で与えられた久保の役割は、あまりにも難しいものだった。
中盤ダイヤモンド型の4-4-2を採用したソシエダは、ビルドアップ時にアンカーのマルティン・スビメンディが最終ラインに落ちることで、相手の2トップに対しスビメンディ+2センターバックで数的優位を確保。そこでボールを動かしながら、両サイドバックには目いっぱい幅を取らせていた。
しかし、SBが基本的に低い位置に構えてしまうため、ヘタフェのプレスがハマる。ソシエダはボールポゼッションを大事にするチームだが、それを受けて最前線のアレクサンダー・セルロートとサディク(途中からモハメド=アリ・ショー)にロングボールを蹴り込む場面が散見された。
トップ下の久保には、前線に収まったところでサポートに回り、前向きでボールを引き取って攻撃の勢いを加速させるという役割が求められたが、そもそも5バックで守るヘタフェ相手にロングボールがなかなか収まらない。
たとえ中盤で前向きにボールを受けられたとしても、セルロートとサディクが共に前のスペースに走り出してしまったため、近くにサポートがない状況がほとんどだった。孤立した久保は何とかしようと試みるが、鋭いチェックに遭いボールロストやパスミスを繰り返したのである。
久保は稀にポジションを下げてボールを受けようとしたが、それはアルグアシル監督の意向に反するものだったよう。前半途中、低い位置に顔を出してパスを引き出そうとした久保は、ベンチに向かい「わかっています」と言わんばかりに手を上げていた。しかし、あまりに窮屈だったのは理解できる。
つまり久保の大苦戦の理由は、チームの構造上の問題によるところが大きい。プレスにハマり、5バック相手にロングボール主体となっては、シルバでも存在感を示すのは難しいだろう。ちなみに後半、トップ下として出場したシルバは下がってビルドアップに関わることを許可されていたため、久保との単純な比較はあまり意味をなさない。
先述した通り、この日の久保は前半のみで交代を余儀なくされたが、あまり悲観する必要はないだろう。もともと考えられていた交代だった可能性も十分にある。まだまだこれからだ。
(文:小澤祐作)