家長昭博が「彼の方がよかったと思う」と称賛したのは…
とりわけ光ったのが、3ゴールに絡んだ背番号41だ。自身の今季通算得点も10に乗せ、一歩間違えばタイトル獲得の可能性が遠のきかねなかったチームの窮地を救った。日本代表の元10番・名波浩(松本山雅監督)も「川崎の絶対的エースは家長」と名指しで敬意を示していたが、本当に今の彼は異彩を放っていると言っていい。
「優勝することが僕がクラブに課せられていること。得点王? 僕が取ったら日本のサッカー界もヤバいと思うんで」と本人は得点ランク2位浮上を含め、個人記録のことは全く気にしていない様子。とにかく「サッカーを楽しんで、川崎にタイトルをもたらす」という意識だけでピッチに立ち続けている。
大願成就のためには、チームメートの背中も力強く押す。2カ月ぶりに先発出場した佐々木に対しても「彼が悔しい時間を過ごしていたのをずっと見ていたし、下を向かずにやっているのが分かっていた。今日は得点を入れた僕より彼の方がよかったと思う。心から称えたいし、(メディアの)みなさんもお願いします」と報道陣にアピールまでしてみせたのだ。そういったフォア・ザ・チーム精神は若い頃の家長は表に出そうとしなかった。それだけ人間的にも成熟したということなのだろう。
ピッチ内外で超越した存在になった背番号41。彼がこの調子で結果を出し続けていけば、川崎の3連覇も決して夢ではない。年齢を重ねれば重ねるほど老獪さを増す稀代のレフティが全てのカギを握っている。
(取材・文:元川悦子)