監督やチームメイトからも高評価
さすがブラジルの名門パルメイラスやレオ・セアラの古巣ECヴィトーリアで育成され、ヨーロッパのトップリーグも経験しているだけあって、オン・ザ・ボールでもオフ・ザ・ボールでも1つひとつの動きが洗練されている。さらに攻撃から守備への切り替えの際にしっかりプレスバックして、的確に相手の選択肢を限定する術も心得ている。
85分には味方がヘディングで競り合った際のこぼれ球が相手に渡ると、ヤン・マテウスがすぐにプレスをかけてボールを奪い、次の攻撃につなげた。クロスを上げるところまで単独で持ち込める推進力も見せる。そして、89分のゴールはシュート技術の高さが光った。
これらの一連のプレーには「どこにスペースがあるのか、監督はどのポジションに僕を使うだろうかということ」をつぶさに観察していた、ベンチでの振る舞いも生かされているだろう。約1ヶ月で自らの役割を理解し、左ウィングで起用されながら、時間帯によっては右ウィングや中央にもポジションを取って、複数のポジションで自らの特徴を発揮できたのは決して偶然ではない。
「右ウィングの方がプレーする機会は多いと思うけど、左サイドでもトップ下でもプレーした経験がある。僕がどのポジションでよりチームに貢献できるかを見極めるのは監督だと思う。監督が選んだところが僕のベストポジションだ」
これだけ起用の幅が広い選手は、チームにとっても非常に大きな強みになる。チームメイトのDF岩田智輝も、ヤン・マテウスについて「かなりいいです。練習から良さがすごく出ていましたし、もっともっとやれると思う。あまりボールを奪われないし、そこはすごい」と期待を寄せていた。
リーグ優勝を争う終盤戦に向けて、頼もしい選手が加わった。湘南戦の前まで公式戦5試合未勝利とやや停滞感の漂っていたマリノスに、再びエナジーをもたらす大きな起爆剤になるだろう。細かいステップや巧みなフェイントを織り交ぜて独特のリズムを刻むドリブルを基軸としながら、様々な局面で強みを発揮してくれるはずだ。
ケヴィン・マスカット監督も「ヤンは戦術的なプレーに対する意識が高く、技術的にも優れている。プレーに爆発力があり、そこに技術が合わさって素晴らしいコンビネーションとなっている」と夏の新戦力を非常に高く評価していた。