身体能力だけではないヤン・マテウスの強み
コーナーフラッグに向かってヤン・マテウスが駆けていくと、チームメイトたちが集まって祝福する。ベンチからも全員が出てきて、大きな歓喜の輪ができた。Jリーグでの挑戦は最高のスタートになった。
約1ヶ月にわたってチームとトレーニングを積んできたことにより、デビュー戦とは思えないほど適応も進んでいた。小柄だが引き締まった体つきで、特に下半身のたくましさは目を見張る。見るからに足の速そうな見た目だが、身体能力だけに頼ったプレースタイルでないことはピッチ上のパフォーマンスで証明した。
ヤン・マテウスは「ベンチに座っていた時に、どこにスペースがあるのか、監督はどのポジションに僕を使うだろうかということも考えながら、しっかり試合を見ていた」と語り、優れた観察眼でイメージを膨らませていた。テクニックとクレバーさを両立したプレーはいくつもあった。
例えば68分にマリノスがPKを獲得する直前、仲川のクロスに対して合わせようと走り込んだ場面では、相手DFの背後から斜めにスペースを突く非常に効率的なポジショニングとランニングを披露。75分にはDFエドゥアルドからの縦パスを受けると、ヤン・マテウスは素早く反転しながら浮いたボールを正確にコントロールし、次の瞬間にはゴール前へ鋭く速いラストパスを供給した。FWレオ・セアラがうまく合わせられていれば1点というプレーで、相手ディフェンスに難しい対応を強いた。
また、79分には中央でボールを持った西村に釣られて相手センターバックが前に出た瞬間を見逃さず、ディフェンスラインにできた小さなギャップに入り込むアクションもあった。スルーパスは出てこなかったが、常に動きを止めず、小さなスペースに対しても積極的に仕掛けていく姿勢はこの場面以外でも随所に見られた。