サガン鳥栖 最新ニュース
限られた環境の中で戦うサガン鳥栖は、ある種「Jの異端」と評することができる。今季から指揮を執る川井健太監督は、いかにしてJ1上位のチームを作っていったのか。[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する『フットボール批評issue37』(9月6日発売)に掲載されている川井健太監督のインタビューを一部抜粋し、前後編に分けて公開する。(取材・文:清水英斗)
川井健太監督が定義するサガン鳥栖のプレーコンセプト
【写真:Getty Images】
―「プレーモデル」は各エリアの状況に応じた原則、プレー基準を細かくまとめたもの。それを考える上での出発点になるのが、チームの価値観や信念を表す「プレーコンセプト」です。たとえば森保ジャパンで言えば、「良い守備から良い攻撃へ」と繰り返されるあの言葉が、プレーコンセプトにあたると思いますが、この解釈、ずれはありますか?
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「大丈夫ですね。聞き入りました(笑)」
―ありがとうございます(笑)。プレーモデルの出発点になるのがプレーコンセプトとすれば、最初はここから伺うのが良いかなと思います。川井さん自身はプレーコンセプトをどのように考えていますか?
「すごくシンプルです。『ボールを前に運ぶこと』、『ボールとともに前に行くこと』。この2つの言葉に集約されるかなと思います。ボールを前に運ぶことは、ゴールに向けて間違いなく必要ですし、そもそもボールだけでいいのか、と言うとそうでもない。『ボールとともに』という言葉を使いましたが、GKも含めて11人が前に運ぶことによって、そのメリットが複合的に生み出されると思っています。この言葉がコンセプトとしてあります」
―なぜ、それをコンセプトに置いたのですか?
「理由はやはりゲームに勝つこと。これが大前提です。そのために必要なコンセプトだから。あとはサガン鳥栖というクラブの文化であったり、地域性であったり、佐賀県や鳥栖市の性格も含めて、いろいろなことを合わせた結果、コンセプトにたどり着いています」
―鳥栖の文化や地域性など、クラブのカラーはどのように見ましたか?
「まずは九州にあること。みなさんは九州とバーンと言葉を投げかけられたら、どういうイメージを持ちますか? 熱いとか(笑)、良い意味で九州男児のようなイメージが湧くと思うのですが、まさしくそうで、熱いものを表に出していく。そういうイメージはありました。クラブも俯瞰的に見たとき、走って頑張って、諦めずにと、すごく一般的ですが(笑)、そのイメージがあったので、それをフットボールでもっと体現したい。さらに鳥栖市は面白い場所にあり、車で10分走れば福岡県、1時間走れば熊本県や大分県、様々な県に移動しやすい。刺激をもらいやすい土地柄でもあるので、そういう文化を踏まえた上で、新しいものを植えつけるチャンスだとも思いました」
―オファーに対して、そういう部分は必ず考えますか?
「考えていますね。サガン鳥栖という場所を鳥栖市から東京に持って行くとか、そういうことはできないわけです。絶対に変えられないものと、変えられるものは最初にしっかりと区別します」
―地域の価値観は、実際に鳥栖に来てから肌で感じることもありますか?
「あります。たとえばコンビニの店員の接し方とか。最初に『袋要りますか?』と聞かれるのですが、今はお金もかかりますよね。僕は『要りません』と答えたのですが、そこで『本当に大丈夫?』と言われて(笑)。優しくですけど」
―念押しですか。マニュアルが浸透したコンビニで、珍しいかも(笑)。
「温かさというか、相手の懐にズバッと入って、思ったことは言いますよ、という感じ。いろいろと細かいところで、『あ、違うな』と思うことはありました」
―面白い。地域の気質はありますよね。
(取材・文:清水英斗)
『フットボール批評issue37』
<書籍概要>
『フットボール批評issue37』
定価:1,760円(本体1,600円+税)
特集:[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する
流行りの横文字にだまされるな
日本社会全体に横文字が氾濫しているのと同様に、サッカー界にも横文字は横溢している。日本サッカー協会が7月15日にホームページに公開した全55ページに及ぶ選手育成の指針名「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan’s Way」からして、現状の趨勢を表しているといっていい。もちろん、本文中にもこれでもかと言わんばかりに、横文字が散りばめられている。
小誌は今回、サッカーチームの指針ともいえる横文字[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]の再定義に挑んだわけだが、前記の「国民的蹴球哲学」(あ・え・て)ではこの3用語ではなく[プレービジョン](26~32ページ)という表現が使われている。ガクッ……。指針を表す横文字でさえ各所で統一されていない現状では、迷い人が量産されるのは目に見えている。「STOP 横文字被害! 私はだまされない」。急場しのぎとして、ひとまずこの姿勢が重要かもしれない。
【了】