バルセロナが苦境を脱した3つの方法
まずは、カウンター。20分の局面では、レヴァンドフスキとハフィーニャを前に残した[4-4-2]のような形で自陣にブロックを敷くと、中盤で奪ったボールを即座にウスマヌ・デンベレに繋いで、高速カウンターを発動。デンべレ、レヴァンドフスキ、ハフィーニャの3トップでセビージャ・ゴールを急襲した。
デンベレは左に開くポーランド代表FWへのパスを選択。レヴァンドフスキはチップキックでシュート。フェルナンドがクリアしかけたボールを、ハフィーニャが頭で押し込んでゴール。試合が始まってから敵の“攻撃的な守備戦術”に苦しんだバルサだったが、一発のカウンターで風穴を開けた。
次に、ロングフィード。先制後はペドリがゲームを落ちつかせるなどして、ボールポゼッションを回復してきたバルサは、36分、後方で繋ぐと、右SBのクンデが少し内側をドリブルで進み、最前線のレヴァンドフスキを目掛けてロングフィードを繰り出す。ポーランド代表FWは見事な胸トラップから、右足ボレーでシュートを突き刺す。クンデのバルサらしいSBのポジショニングから、追加点が生まれた。
そして、セットプレー。苦戦を強いられながら2-0で前半を折り返したバルサは、50分、ショートコーナーから、ハフィーニャがファーに蹴ったボールをクンデが頭で折り返す。そこにエリック・ガルシアが詰めて、3点目――。
この3つのゴールに共通するのは、いわゆる中盤の3枚を飛ばしていることだ。言い換えると、中盤の3枚の強みにこだわらない、といったところだろうか。
セビージャが対バルサで選択してきた“攻撃的な守備戦術”で中盤の3枚を封殺されたのなら、後方からのビルドアップに決してこだわらない。ブロックを敷いてカウンター、SBからの斜めのロングフィード、そしてショートコーナーと“多彩な攻撃”を仕掛けていったのが、今回のセビージャ戦のシャビ・バルサだった。敵が抱くバルサ=繋ぐというイメージを逆手に取ってゴールを量産した、とも言える。
強者は、強者だからこそ、自分たちのスタイルにこだわらない。シャビ・エルナンデス監督率いるバルセロナは、そんな柔軟で“多彩な姿”を示して、セビージャに勝利を収めたのである。
(文:本田千尋)