「ピッチ上の監督」が実行した修正
ロドリゲス監督の戦術を誰よりも深く理解しているからこそ、チームメイトたちへの助言が押しつけの類と感じられてしまえば、むしろ逆の効果を生み出しかねない。指揮官と既存の選手たちとの狭間にいた、と表現すればいいだろうか。
しかし、日本でのセントラル開催となったACL東地区のノックアウトステージ中に岩尾が残した言葉は、新体制発表会見時とはまったく違うものに変わっていた。
「一人の選手として自分が浦和というクラブでどのようにありたいのか、というところが僕のなかでバシッと固まったところがあるので」
こう語ったのは手倉森誠監督に率いられるパトゥム・ユナイテッド(タイ)を4-0で下した、22日の準々決勝後の取材エリアだった。実は2点をリードして迎えたこの試合の後半開始直後に、岩尾はロドリゲス監督の指示にいい意味で背いている。
「僕が最終ラインに下がって3枚で動かせと、ハーフタイムに指示を受けました。相手が4-4-2のままなら、その形で相手の選手を引き出すと監督は考えていたと思います。でも、後半が始まると意外に3人で出てきた。ウチの3人に対して3人で合わせられ、プレッシャーを受ける場面があったので、すぐに酒井(宏樹)選手と『4バックのままでいいんじゃないか』と話して、そこでもう一回ボールを握り返せました」
選手交代とともに陣形も変えてきた手倉森監督の意図を見抜き、ベンチの指示を待つまでもなく、ピッチ上でプレーしている選手主導の判断で戦い方を修正する。岩尾の感性に導かれ、落ち着きを取り戻した浦和はさらに2点を追加して快勝した。