アジアサッカー・AFCチャンピオンズリーグ(ACL) 最新ニュース
【写真:Getty Images】
酒井宏樹が浦和レッズをACL決勝に導く
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の東地区準決勝が25日に行われ、PK戦までもつれた死闘を制した浦和レッズが全北現代モータースを下して決勝への切符を手にした。
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延長後半の116分に全北現代が勝ち越しゴールを挙げ、決勝進出に一歩近づいた。しかし、諦めることなく相手ゴールへ向かっていった浦和は120分にFWキャスパー・ユンカーが劇的な同点弾。土壇場で追いつき、PK戦ではGK西川周作が2本連続セーブを見せるなどして3-1で勝利を飾った。
最終盤の同点ゴールの起点となったのは、DF酒井宏樹のボール奪取だった。相手選手の足もとにスライディングで思い切り飛び込んだ日本代表DFは、豪快にボールを奪うと、そのまま持ち上がって、MFダヴィド・モーベルグとの連携からクロスに持ち込む。
このプレーがきっかけとなり、最終的に相手GKが弾いたボールにユンカーがゴールネットを揺らした。
「1-2になって、まだ5分くらいありましたし、もう1回いくぞという気持ちも込めて、イエローカードでもいいという覚悟で(スライディングに)いきました。やっぱりあそこで何かしらのアクションが欲しかった。ファウルなく奪えたことはよかったです」
自らの激しいスライディングタックルの場面を、酒井はこのように振り返る。試合終了間際の失点によって、チームが気落ちしてしまったり、ゴールを目指す上で選手間の意識がばらついてしまったり、一体感を失う可能性もある。
そんな状況になった時、経験豊富な日本代表サイドバックは「プレーでしか示すことはできない」と自らのスライディングタックルに思いを込めた。まだまだここから、全員で反撃するんだ! と。
開始8分の先制ゴールの場面も然りだが、酒井はこの試合で前線に飛び出していくタイミングを慎重に図っていた。「(前に)出ていったタイミングでデイヴィッド(モーベルグ)がうまく使ってくれますし、そこの信頼はできているので、省エネしながらここぞというタイミングでいけた」と、120分間の戦いの中でも余力を残しながら最終盤に全エネルギーを解放してゴールに向かっていった。
酒井のスライディングを見たチームメイトたちに、意図は正確に伝わっていたからこそ生まれた同点ゴールでもあった。ピッチ上の選手たちのみならず、スタジアムに集まった浦和のファン・サポーターも一体となって何としてでも追いつくという強い気持ちが、あの120分のゴールまでの一連の流れに凝縮されていた。
積極的な声かけでチームを導くタイプではないと自覚しているが、酒井は「ポテンシャルのある選手たちが多いので、経験をちょっと加えてあげるだけで大きな選手になる。そこは心がけました」と語る。
今大会の決勝トーナメントを通じて、試合ごとに異なるロッカールームの雰囲気を察知しながら、状況に応じて様々な形でいつも通りの力を発揮できるよう働きかけていたという。例えば全北現代戦なら「スタジアムの雰囲気もあって、すごく緊張感が漂っていたので、ちょっとリラックスさせるような感じでやりました」と明かす。
「(ACL)はアジアで一番大きい大会ですし、欧州のチャンピオンズリーグがそうなように、やはりアジアもそうあるべきです。世界から見たら日本のリーグは本当に小さいもので、この大会で優勝し続けるとか、優勝し続けるようなクラブが出ることは日本のアピールにもつながる」
浦和がクラブとしてACL制覇にかけるモチベーションは非常に高く、ファン・サポーターの後押しも他クラブを圧倒していた。だが、実際に目の前の試合を1つひとつ勝っていくにあたって、酒井の存在や経験値、ACLに対する思いの強さは極めて重要だった。彼がいなければ全北現代戦も同点に追いつけず、PK戦を迎える前に敗退が決まっていたかもしれない。
(取材・文:舩木渉)
【了】