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Jリーグ 2年前

2年でJ3からJ1、ヴィッセル神戸・飯野七聖が貫く自分の強み。サガン鳥栖で磨いた武器の生かし方とは?【この男、Jリーグにあり/前編】

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Getty Images

「本当はああいうタイプの選手じゃない」


【写真:Getty Images】



 ハーフウェイライン際で、汰木がマリノスのパスへとっさに足を出す。前方にこぼれたボールを自ら拾い、そのままドリブルに入ってカウンターを発動させた汰木に呼応するように、飯野も中央を全力で駆け上がった。

 そして、ペナルティーエリア付近で汰木のパスを呼び込んだ直後だった。マリノスの守護神・高丘陽平の動きを冷静に見極めながら、飯野は右足でボールにソフトタッチ。緩やかな軌道の一撃を、無人のマリノスゴールに吸い込ませた。

「本当はああいうタイプの選手じゃないんですけど、今日はすごく冷静でした」

 移籍後初ゴールをACLの大舞台で、華麗に決めた飯野はちょっぴり照れ臭そうに笑った。直後の10分に追いつかれた神戸は、31分にMF佐々木大樹のPKで突き放す。PK獲得までの流れをさかのぼっていくと、またもや飯野に行き着く。

 神戸の攻撃を防いだマリノスのキャプテン、MF喜田拓也がゴール前からパスをつないでいく。ターゲットは左サイドから自陣の中央へ入ってきた永戸。グラウンダーのパスを足元で受けた永戸が、さらに前方へ攻撃を展開しようとした瞬間だった。

 猛然とプレスバックしてきた飯野が瞬く間に永戸との距離を詰め、背後から左足でボールに突っかけた。こぼれ球は大崎から前方の大迫勇也へ素早くつけられ、大迫のクロスにゴール中央へ入ってきた佐々木が左足を合わせた。

 左前方にいた汰木へのワンタッチパスは、マリノスのDF實藤友紀にブロックされたかに見えた。しかし、ビデオ・アシスタント・レフェリーが介入し、主審がオン・フィールド・レビューを実施した末に實藤のハンドが宣告された。

 このときも、プレスバックを仕掛けたばかりの飯野は体勢を立て直し、再び縦方向へスプリントを開始している。底知れぬスタミナを披露した飯野は、永戸の隙を狙ったプレスバックだったのか、という問いをやんわりと否定している。

「隙というか、チームとして前からプレスをかけていく以上は、一人ひとりが何度も二度追いしなきゃいけないと思うので。前に、前にというプレーはもちろんですけど、僕の特徴は90分間を通してチームのために人の何倍も走れるところでもある。その特徴をどのようにしたら生かせるのかといえば、ああいう場面でもサボらずに戻るとか、そういう細かいところだと思っているので、これからも続けていきます」

 試合を通して飯野とマッチアップを繰り返した永戸は、特にプレスバックを受けてボールを失い、自身はピッチ上に転がされた場面を悔しそうに振り返った。

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