起点となった3点目に込められた「意図」
「本来であればブロックを敷いて、守りに入ってもいい時間帯でしたけど、相手がマリノスだったので。すごく力のあるチームだし、1点のリードでは不安だ、このままでは終わらないと思っていたので、あのシーンは『前に、前に』と思っていました」
右ウイングで先発した飯野は前半のキックオフ直後から、埼玉スタジアムのピッチを縦横無尽に走りまくっていた。時間帯的にもさすがに体には疲労が蓄積している。それでも気がついたときには、ルーズボールへ向かって走り出していた。
「ボールを取れるかどうかわからなかったけど、あそこで前に蹴られるよりも、深いところでゴールキックなりスローインになった方がチームとして前に押し込める。相手の陣内でプレーさせられれば、という意図もあってプレスにいきました」
当然とばかりに笑った飯野の献身的な姿勢は、貴重なゴールとなって結実する。飯野から山口蛍、大崎玲央とわたったボールは縦へ走り出していた山口へ。ゴールラインぎりぎりで山口が折り返したラストパスに、小田裕太郎が右足を合わせた。
90分にFWアンデルソン・ロペスにネットを揺らされ、再び1点差に詰め寄られたなかで、小田のゴールを導いた飯野の頑張りがクローズアップされてくる。
「あの場面でボールを拾われてしまったのは、やはりいい選択ではなかったと思う」
突然目の前に現れた飯野にボールをさらされた永戸は、試合後にこう振り返った。レフティーが言及した「選択」とは、タッチライン際でスピードを緩めた点を指す。
鹿島アントラーズとサンフレッチェ広島が対峙した2019年大会のラウンド16以来、3年ぶり7度目のJクラブ対決を、開始早々の7分に動かしたのも飯野だった。