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ACL歴代最多得点FWが “引退”?「これがラストダンス」。通算9大会出場42得点、傑志を初の16強進出に導く【ACL】

text by photo by 2022 Asian Football Confederation (AFC)

アジアサッカー・AFCチャンピオンズリーグ(ACL) 最新ニュース


【写真:2022 Asian Football Confederation (AFC)】



ACL歴代最多得点のダムヤノヴィッチが去就に言及

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で歴代最多得点記録を持つストライカーが、輝かしい実績とともにアジアの舞台を去ることになるかもしれない。



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 ACLのラウンド16が19日に行われ、香港の傑志はタイのBGパトゥム・ユナイテッドに0-4で敗れて準々決勝進出を逃した。この試合後、傑志に所属するFWデヤン・ダムヤノヴィッチが取材に応じ「今大会が僕にとって最後のACLになると思う」と語った。

 モンテネグロ代表歴を持つダムヤノヴィッチの、アジアでの冒険は2006年にサウジアラビアのアル・アハリに移籍した時から始まった。2007年には韓国の仁川ユナイテッド、2008年から2013年まではFCソウルで活躍。その後は中国へ渡り、江蘇舜天と北京国安でもプレーした。

 2016年にFCソウルへ復帰し、水原三星ブルーウィングスや大邱FCを経て2021年から香港の傑志に所属している。現在41歳で、ACLは優勝経験こそないものの9度出場。通算42得点という歴代最多得点記録を持っている。

「100%とは言い切れないけど」と付言したうえで、「今大会が僕にとっておそらく最後のACLになると思う。非常に残念だ」と述べたダムヤノヴィッチは次のように続けた。

「常にいくつものクエスチョンマークが浮かんでいる。誰も未来に何が起こるかはわからない。今日が僕にとってACLでの最後の試合になってしまうのは残念だけど、これがラストダンスだ。でも、それでいい。それが人生だから。サッカー選手としてのキャリアを終えた後の人生の方がもっとずっと長いからね」

 クラブ史上初のベスト16進出を果たした傑志の一員として臨んだ「最後の試合」は「加入してからの2年間で最悪の試合の1つ」というほど失望感の残る大敗になってしまった。しかし、ダムヤノヴィッチの存在感は健在。全盛期ほどの運動量はなくプレー範囲も狭まっているとはいえ、大柄な体格を生かした空中戦やポストプレー、ペナルティエリア内での嗅覚、シュート技術などには目を見張るものがあった。

 紛れもなく2010年代のアジアサッカー界を先頭に立って引っ張ってきたストライカーである。ACLではFCソウル時代に25得点、北京国安時代に2得点、水原三星時代に9得点、そして傑志では6得点を奪った。今大会もグループステージで2得点を挙げていた。

 では、今後ダムヤノヴィッチの記録を破る選手は現れるのだろうか。歴代トップスコアラーはこう語る。

「ACLで何年もプレーし続けるのはとても難しい。非常に高いレベルの舞台だからね。僕は12年くらいかな、本当に長い間ACLでプレーしてきて、信じられないほどレベルの高いストライカーたちとも戦ってきた。

正直に言って、僕の記録を破る選手はいずれ出てくると思う。でも、今すぐではなく、5年後かもしれないし、2年後、あるいは10年後になるかもしれない。それだけの選手が現れて、僕と同じくらいアジアでのプレーを楽しんで、長く留まれば、僕の記録を破ることができるだろう。それが将来を担う次世代の選手になれば嬉しい。そういう選手がゴールを決め続ければ、いずれ僕の記録に追いつくことができるだろう」

 ACL歴代2位の得点記録を持つ元韓国代表のFWイ・ドングクはすでに引退している。現役選手で唯一ダムヤノヴィッチの記録に近づけそうなのは、得点数歴代5位で現北海道コンサドーレ札幌のFW興梠慎三だが、16点もの大差をつけられているため追いつくのは極めて難しいだろう。

 来年7月に42歳を迎えるダムヤノヴィッチは、ACLだけでなく現役からの引退も近づいてることを実感しているようだった。傑志との契約は2023年夏までで、同年のACLが9月開幕に決まったことから「今大会が僕にとって最後のACL」と発言したのだろう。

「状況がどうなるか見てみないとわからない。僕にはまだ傑志との契約があるし、満了する来年になってどうするか考えたい。いくつかアイディアは持っている」と語るダムヤノヴィッチのプレーを見られるのは、今季限りになるかもしれない。

「これまでのキャリアも楽しんできたけど、サッカー以外の人生も楽しまないと。もうすぐサッカーのない人生に向かうことになると思う。13年間(※正確には14年間)ACLでプレーして、素晴らしい時間を過ごし、数々の偉大な選手やチームとも戦ってきた。次の世代の選手たちが、僕のようにACLを楽しんでくれれば嬉しい」

 アジアサッカーの歴史に名を刻んだストライカーにとって正真正銘の「ラストダンス」の時は、間近に迫っている。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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