サッカー界にはどのような影響が?
こうなれば、クラブにとっては選手に支払う消費税相当分80万円は払い損になってしまう。最悪のパターンとして、以下のような事態が考えられる。
1:選手に課税事業者への登録を促しインボイス登録番号をもらう
2:消費税相当分の80万円を値引きして選手と契約する
3:選手との契約内容は変えずにチケットやグッズなどの販売価格に転嫁する
もちろん具体的な対応は各クラブや選手によるだろうが、大きくはこの3パターンに分けられるだろう。クラブが負担するか、年俸1000万円以下の選手やスタッフが負担するか、価格転嫁されてサポーターが負担するか、という違いになってくるのだ。
現状では2023年10月から施行が予定されているインボイス制度だが、国民から反対の声を多く届けることができれば、今から中止・廃止に持っていくことも不可能ではない。実際、筆者は与野党を問わず国会議員と会合の場を持ち、インボイス制度の悪影響を伝え、インボイス制度の中止・廃止に向けて動いている。
この議論に必ずついて回るのが、「預かった消費税は益税にせずきっちり納めろ」という声だ。しかしこれは誤解である。消費税は預かり金ではないことは、東京地裁と大阪地裁で判決が下されている。また前述した消費税の計算方法からもわかる通り、「売上の1/11を消費税とみなす」わけであり、たとえ消費税分を価格に上乗せせずに取引していても、税額の計算では否応なしに「売上の1/11が消費税とみなされる」のだ。
サッカーなどの人を集めるエンターテインメント業界は、コロナ禍で真っ先にイベントが中止に追い込まれ被害にあった業界のひとつだ。Jリーグ各クラブはコロナ禍により無観客での試合を強いられ、経営的なダメージは計り知れない。そんな状況でインボイス制度まで導入されてしまっては、存続が危うくなるクラブが出てきてもおかしくない。これ以上、理不尽な負担をサッカー界が背負う必要はない。インボイス制度に対して、明確に「反対」を表明すべきだ。Jリーグおよび日本サッカー協会のアクションに期待したい。
(取材・文:中村僚 監修:佐々木淳一【税理士】)
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