負担はファンにも及ぶ?
さらにインボイス制度は、コーチなどの現場スタッフも年俸1000万円以下なら対象だ。女子プロリーグ「WEリーグ」の岡島喜久子チェアは、初年度である2022シーズンを終えた後、負傷者の続出に対して「トレーナーが各クラブにいるが、(ケガの)予防に関して長けている方、いない方がいると思う」とスタッフの問題点を挙げた。
仮にインボイス制度によってフィジカルコーチの条件面にも影響が出る、ないしは優秀な人材が雇えなくなるなどの事態が発生した場合、まわりまわってJリーグ選手のフィジカルにも悪影響をおよぼすことは、十分に考えられる。
もしくは、チケットやグッズの価格上昇だ。選手もスタッフもいまの条件を据え置くと決めたとしても、新たな税負担は被りきれない。そうなれば、試合のチケットやグッズなどに価格を転嫁せざるを得ないだろう。しかしこの価格上昇は、新たに発生する税負担を吸収するだけで、クラブに利益は残らない。ただでさえ生活必需品の物価高で生活が苦しくなる中、貴重な息抜きの場まで値上げが起きる可能性があり、しかも国税として吸収されるだけなのだ。
インボイス制度によって新たに発生する税負担を、クラブが負うか、選手が負うか、サポーターが負うか、全員で分かち合うか。いずれにせよ得するものは誰もいない制度だ。
なぜ、インボイス制度による請求書の仕様変更で新たな税負担が発生するのか? なぜ、経営規模が小さいクラブの方が新たな税負担額が大きいのか? すべてはインボイス制度と消費税の仕組みが関係している。複雑だが、詳細を解説する。