なぜ浦和レッズは「得点力不足」から抜け出せたのか
序盤の2つのゴールシーンを見ても分かる通り、伊藤の「前へ前へ」という姿勢は、今の浦和攻撃陣に大きな厚みをもたらしている。そんな一挙手一投足は、2002年の日韓ワールドカップ(W杯)でブレイクした稲本潤一を彷彿させるものがある。182センチという体格やスケール感を含めても、かつてアーセナルを筆頭に欧州を渡り歩いたダイナモに通じるところがある。伊藤も同じような軌跡を歩んでくれそうな期待感を抱かせてくれている。
背番号3の状態が上向き、モーベルクら新戦力もフィットし、スピード系FW松尾の最前線起用が的中するなど、複数要因が絡み合って最近の浦和は結果が出るようになった。今季序盤に苦しんだ「得点力不足」から抜け出しつつあるのは、リカルド監督にとっても朗報と言える。
「今年は選手が大きく入れ替わり、途中から入った新加入選手もいて、全員揃って練習する機会が少なかった。チームとしてどういうプレーをしたいのかという絵を全員が描く作業を6月の中断期間にやれたことで、イメージの共有が図られ、得点につながっている」と指揮官も前向きにコメントしていた。仮に川崎に不測の自体が起きていなかったとしても、今の浦和であれば王者と互角以上に戦えたはず。そこは自信を持っていい。
実際、彼らは2-0で前半を折り返すことに成功。川崎にボールを握られる時間帯も増えたが、危ない場面はしっかりと立ち切っていた。後半も相手がギアを上げ、後半35分には家長昭博のPKで1点を返されたが、直後に岩尾憲がダメ押しとなる3点目をゲット。3-1で勝ち点3を積み上げることに成功している。
その立役者の1人となった伊藤は後半24分で下がり、勝利の瞬間を外から見守ることになった。本来であればもっと長い時間ピッチに立っていたかったはずだが、フィジカル的に落ちたのは事実。その課題を本人も痛感したという。