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ツバ吐き退場から2ヶ月ぶり復帰へ。アンデルソン・ロペスが抱く決意、そして支えた横浜F・マリノスの仲間たちの想いとは

text by 編集部 photo by Wataru Funaki

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アンデルソン・ロペス
【写真:舩木渉】



アンデルソン・ロペス、長期出場停止から復帰へ

 横浜F・マリノスに頼もしいストライカーが帰ってくる。10日に行われる明治安田生命J1リーグ第21節のセレッソ大阪戦で、約2ヶ月におよんだ出場停止期間を消化したマリノスのFWアンデルソン・ロペスが復帰する見込みとなった。



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 今季リーグ戦で7得点を挙げているブラジル人ストライカーは、5月21日に行われたJ1第14節のアビスパ福岡戦の終盤に相手選手へのツバ吐き行為が確認されて一発退場に。その後、Jリーグから6試合の出場停止と、クラブ独自の処分として天皇杯2試合の出場停止が課された。

 計8試合にわたって大きな得点源を欠くこととなったマリノスだが、現在はリーグ戦6連勝中で首位に立っている。出場停止処分が解けたロペスの復帰によって、その勢いにさらなるブーストがかかることが期待される。

 福岡戦の直後に行われたJ1第15節の京都サンガF.C.戦で2-0の勝利を飾った後、マリノスのDF小池龍太は「ロペス自身がすごく反省していて、今日の試合は彼の頑張りがすごく報われたんじゃないかと思っています。前日練習で相手チーム役を100%以上の力でやっていました。彼が本当にファミリーを大切に思っていること、本当に反省していること、それを知って今日の試合は間違いなく勝たなければいけなかったし、僕らも彼を支えるという意味で強く戦えたと思っています」と話していた。

 それから約2ヶ月間、ロペスはチームに対してどんな振る舞いを見せてきたのだろうか。DF角田涼太朗は「もちろん(ツバ吐き)行為自体は許されるものではないですけど」と前置きしつつ、「誰一人としてロペスを責める選手はいなかったですし、トレーニングの中からすごく意識高く取り組んでいました。その結果、彼のコンディションはすごくいいと思うので、ここからの後半戦に向けて重要な戦力だと思います」と証言する。

 ケヴィン・マスカット監督も、試合に出られない中でロペスがどんな姿勢を見せるかつぶさに観察してきた。そのうえで「もちろん彼の行為は受け入れられないものだが、それを彼も深刻に受け止めて、反省しているとすぐに謝罪した。その瞬間から今日まで、我々は彼の行動を見てきた。みんなに認められるために彼は非常によく頑張っていたし、彼は行動で私だけでなくチーム全員に姿勢を示していた。一生懸命に努力して、チームを助けたいという思いで毎日前向きにハードワークする姿をみんなに見せてきた」と語る。

 8日の練習後に取材に応じたロペス自身も「あの試合ではリードされていたこともあり、相手の挑発に乗ってしまった。本当に頭にきて、ああいうリアクションになってしまって残念に思う。ただ、それは過ぎたことなので、しっかりと受け止めたし、今後が大事だと思っている」と、言葉に力を込める。

 退場になった後、すぐにチームメイトや監督、スタッフらに謝罪した。反省の気持ちを自身のSNSにも綴り、長期の出場停止処分も当然の報いとして受け入れた。相手選手に対する唾吐き行為は誰がやったとしても許されないものだが、ロペスは自らの行動を省みて、信頼を取り戻そうと努力を重ねている。

「練習をして、試合に出られずにメンタルを保つのは選手として本当に難しい。ただ、意識を高く持って、自分で自分をポジティブに持っていこうと考えながらやってきた。監督も『日々の自分の姿勢をチームは見ている』と言っていたので、日々意識高く、チームのために頑張ろうというメンタルでやってきた。

あってはいけない行為だったけれど、誰一人僕のことを見捨てずポジティブな言葉をかけてくれた。監督をはじめ、選手たちも仲間だと感じたし、すごくポジティブなメッセージをくれた。ファン・サポーターの皆さんからもポジティブなメッセージをたくさんいただいた。振り返ってみると、そういう人たちの支えがあって、試合に出られない中でも落ち込まずに一生懸命、日々の練習ができたと思う」

 6月上旬に家庭の事情でブラジルに一時帰国した期間もありながら「処分を受けてから1日も休んでいない」と語るロペスは、支えてくれた人たちに恩返しをするべく燃えている。そして、反省の気持ちを受け取ったうえでロペスのことを支えてきたチームメイトたちも、巻き返しに期待を寄せる。

 チームキャプテンのMF喜田拓也は「もちろん彼は反省していますし、(ツバ吐きは)反省すべきものだったと思いますけど、処分が下った直後に彼を1人にしないというのはチームみんなで話していました。彼自身もチームのためを思って行動しているのは全員に見えていた」と語り、こう続ける。

「ああいう大きな出来事はありましたけど、ロペス自身も感じるところがあったと思うし、彼ともすごく話し込んできた。次からやってくれると本人も言っていたので、『お願いします』と言っておきました」

 マリノスではFWレオ・セアラやFW西村拓真が絶好調で、ロペス不在の間にその穴を埋める以上の活躍を披露してきた。長期の出場停止処分が解けても、背番号11がすぐにポジションを取り戻せる保証はない。

 それでもロペスは「FWなので個人としての目標を掲げるなら得点王を狙っていきたい」と、ゴール量産で感謝の気持ちを表現していくつもりだ。

「処分を受けて、次の日に監督に言われたのは『復帰した時にしっかりとチームのために働いてくれ』ということ。離脱する前は高いレベルでやっていたし、パフォーマンスも良かったと思うので、それを復帰しても続けて、もっとレベルアップできるように。チームに貢献できればと思っているし、監督もそれを望んでいると思う」

 10日のセレッソ大阪戦では、周囲からの期待にゴールという形で応えられるだろうか。一度失敗を犯したとて、それで全てが終わってしまうわけではない。リスタートのチャンスを与えられたロペスの決意や覚悟の強さを、そのプレーぶりからしっかりと確かめたい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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