遠藤航が「伝説」になった夜
日本代表で取材に応じた際に遠藤は、自らのプレーに対する意識を次のように語っていた。
「僕はそんなにガンと言うタイプではないので、プレーで見せることになる。自分のポジションはプレーで見せやすいと思っているし、ハッキリしているというか、守備的なMFで真ん中にいてプレーで見せるメリットはすごく大きいと思っています。
切り替えのところでボールを奪ったり、プレー1つで見せられる機会がすごく多いので、その回数をいかに増やせるかみたいな作業になってくる。それで結果的にチームとしてよくなっていけば、自分としては理想です」
21/22シーズンのシュトゥットガルトは残留争いに巻き込まれた。序盤からやや低調な戦いが続き、昨年12月中旬から4連敗も含む9試合勝利なしという大不振で年をまたいだ。終盤にかけてもなかなか勝ちきれない試合が続き、とうとう1部残留が決まらないままリーグ最終節を迎える。
そこで遠藤は「伝説」になった。
16位のシュトゥットガルトがケルンに勝ち、15位のヘルタ・ベルリンがドルトムントに敗れれば順位が逆転して自動残留が決まる状況。そんな中、12分にFWサシャ・カライジッチのゴールで先制していたシュトゥットガルトは、59分にケルンに追いつかれてしまう。
終盤までスコアは動かず後半アディショナルタイムに突入し、シュトゥットガルトは16位で2部3位との入れ替え戦に回ることが濃厚かに思われた。
ところが勝利の女神はシュトゥットガルトを見捨てていなかった。92分、左コーナーキックをニアサイドでDF伊藤洋輝が逸らすと、ファーサイドに詰めていた遠藤が頭で押し込んで劇的な勝ち越しゴールを奪ったのである。
メルセデスベンツ・アレーナに集まった満員の大観衆は、キャプテンのゴールで歓喜に沸いた。そして、試合終了と同時にファン・サポーターがピッチになだれ込んで1部残留に喜びを爆発させる。遠藤はチームメイトたちに胴上げで祝福され、キャプテンとしての功績も称えられた。