慣れないウィングバックでの苦悩
日本代表入りして初めての取材対応の際に、三笘は「結局は試合で結果を出さないと認めてくれないので、最初の頃はもがきながらやっていました」と欧州での苦労を明かしていた。難しかったのは自分をアピールすることだけではない。3-5-2の左ウィングバックという新たな役割に適応することも必要だった。
フロンターレ時代、主に4-3-3の左ウィングでプレーしてきた三笘にとってウィングバックは初めての挑戦だ。高い位置で得意のドリブルを仕掛ける場面が減るばかりか、守備時には最終ラインまで戻って体を張ることも求められ、身体的な負担も大きくなる。その中で自分の武器を生かし、いかに結果を残すか試行錯誤の日々が続いていた。
とはいえ大事なのは何よりも試合に出ること。ユニオンにはウィングのポジションがなく、2トップにもゴールを量産していたヴァンゼイルとデニス・ウンダブという絶対的な存在が君臨しており、「試合に出るためにウイングバックが最適だった」のである。
ピッチ外では栄養士や専属のトレーナーをつけて肉体改造にも取り組み、ピッチ内では難しい役割をこなしながら結果を求めてプレーする。日本代表にも選ばれていながら、昨年12月にベルギーで取材した際には「全然やれている感覚はない」と語り、「苦しい」という本音も漏らしていた。
「(ウィングバックは)難しいですね。最終ラインまで戻るところと、(前に)出ていくところと、上下動が激しいので、そこでいかに自分の特徴であるドリブルを出していくか考えながらやっていますけど、なかなかまだ(最適なバランスを)つかめてはいないです」
リーグ前半戦の頃は守備面で背後をカバーするセンターバックに救われる場面も多く、スラン戦のハットトリックの後は単発のゴールこそあれ、なかなか「結果」が続かなかった。
それでも「もちろん先発で出てナンボだと思っているので、途中出場での役割もわかっていますし、流れを変えられるとも思っていますけど、そこだけの選手にはなりたくない」と、三笘の高い志にブレはなかった。