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鎌田大地が乗り越えた2つの試練。屈辱的な交代と公開説教、「ゼロ」から掴んだ信頼とEL優勝【21/22欧州日本人総括コラム】

シリーズ:21/22欧州日本人総括コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

結果で示した存在の大きさ

鎌田大地
【写真:Getty Images】



 グラスナー監督の公開説教後、初めて先発出場を果たした第25節ヘルタ・ベルリン戦で、鎌田はラファエル・サントス・ボレのゴールをアシスト。その4日後に行われたEL・ラウンド16のベティス戦では決勝ゴールを決め、さらにその4日後の第26節ボーフム戦でも決勝ゴールを奪取。公式戦3試合連続で目に見える結果を残し、監督に自身の価値を改めて証明してみせたのである。

 その後、チームの視線はELへと移った。その中で鎌田はブンデスリーガでのプレー時間を減らすことになるのだが、ELでは決勝トーナメントすべての試合で先発出場。ケルン戦で不甲斐ない出来に終わるも、そこで腐らず結果を出していた鎌田に対するグラスナー監督の信頼の表れだったと言っていいだろう。

 そんな技巧派MFの決勝トーナメントでの働きぶりは、指揮官の期待に応えるほど素晴らしかった。準々決勝2ndレグ、バルセロナ戦ではフィリップ・コスティッチの得点をお膳立てし、3-2の勝利に貢献。準決勝ウェストハム戦では1stレグと2ndレグともにフル出場し、1得点をマーク。英紙『ガーディアン』には「デクラン・ライスすら抑えるのに苦労していた」と称賛されていた。

 そして決勝レンジャーズ戦でも鎌田はフル出場を達成した。ゴールやアシストこそなかったが、マンマークを受ける窮屈な中でも随所で持ち味を発揮し、3度のタックルを成功させるなど守備でも奮闘。PK戦では3人目のキッカーを務めこれを成功させ、チームを42年ぶり2度目の優勝に導いた。試合後、鎌田は「試合後初めて嬉しくて号泣しました。振り返ると自分のサッカー人生はいつも上手くいかず難しかったけど自分を信じてやり続けてやっと報われた気がします」と自身のSNSで喜びのコメントを残していた。

 そうしたフランクフルトでの活躍もあり、鎌田は6月シリーズで日本代表への復帰を果たした。4-3-3への適応が注目され、インサイドハーフで出場したパラグアイ代表戦では、ゴールも決めるなど躍動。カタールワールドカップのメンバー入りに向け、一歩前進したと言えるような内容だった。

 苦しい時期を不屈の精神で乗り越え、フランクフルトに欠かせぬピースとしてEL制覇という財産を手にした鎌田には、現在トッテナムやセビージャといったクラブからの興味が噂されている。カタールW杯を控える中、フランクフルトを離れるかどうかは本人とその周囲にしかわからないことだが、どんな壁にぶつかろうとも、鎌田は今シーズンのように不屈の精神で乗り越えていくのだろう。

(文:小澤祐作)


【了】

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